北朝鮮の朝鮮労働党が年末恒例の党中央委員会総会を開き、2024年の党・国家事業を総括するとともに、来年初めに予定される第9回党大会に向けた準備方針を確定した。会議関連の報道では、対米・対韓・対日など外部に向けた戦略メッセージが一切盛り込まれず、内政重視の姿勢が際立つ格好となった。一方、党規約を改定する方針が示され、韓国を「敵対的な別国家」と位置付ける“二国家論”が条文化されるかどうか注目が集まる。
国営の朝鮮中央通信は12日、9〜11日の3日間にわたって開催された第8期第13回総会の拡大会議の様子を報じた。会議には中央委員と候補委員のほか、各省・中央機関の責任者、地方党幹部、人民委員長、主要工場の責任者、さらには人民軍指揮官らが傍聴として参加。会議では執行部選出後、金正恩総書記が議事を主宰した。
審議・承認された議題は、①今年の政策執行、②党中央検査委の事業、③第9回党大会準備、④2025年予算および2026年予算案、⑤組織問題の5項目だった。
金総書記は今年について「自力を倍加させ、最後の関門を突破した年」と述べ、5カ年国家経済発展計画が「完遂された」と主張。労働新聞は工業部門が増産と節約闘争によって計画水準を上回り、農業でも昨年より高い穀物収獲を上げたと自賛した。また、地方発展政策に基づく各種建設の着工・完成を成果として列挙し、「人民の福利向上に自負できる結果」と強調した。
軍事分野でも「現代化方針に沿って国家防衛力全般で意義深い成果を収めた」と評価。とりわけロシア派兵については「海外軍事作戦に出兵した部隊が輝かしい戦果を挙げ、軍と国家の名声を示した」と誇示した。さらに体育など“国家威信”に関わる分野も成果に含め、年内の進展を「思想の力」によるものと強調した。
一方、会議では幹部の規律問題も俎上に載せられた。金総書記は一部組織の「誤った思想観」や非活動的な態度を厳しく叱責。党中央検査委の報告でも偏向的な規律違反が資料付きで指摘されたとされ、来年の党大会を控えて統制強化に乗り出す姿勢がうかがえる。
特に力点が置かれたのが農業改革だ。金総書記は、麦の栽培面積拡大や加工能力強化、分配制度改革、西海岸干拓地の農場現代化など、農業全体の構造転換を指示。「社会主義的分配原則を徹底できる体系を樹立せよ」と述べ、最重要課題と位置付けた。地方発展をめぐっては2026年の対象20地域を確定し、各地に「特性に合った成果の創出」を求めた。
会議では26年国家予算案の承認に加え、中央委員1人と候補委員5人の解任も行われたが、具体的な人事内容は公表されていない。党大会準備では、準備委員会設置や党規約改定案作成、代表者選出方式の確認などが示され、規約改定が事実上確定した。
注目されるのは、韓国を「敵対的別国家」と規定する“二国家論”が規約に正式に盛り込まれるかどうかだ。北朝鮮は今年、韓国を「同族ではない」と繰り返し主張しており、専門家の間では「党大会での明文化は既定路線」との見方もある。
今回の報道には日本・米国・韓国・中国・ロシアとの関係など、外交・安保に関わる内容はほとんど含まれなかった。北朝鮮が内政と組織整備に政策資源を集中している可能性に加え、仮に外交戦略が議論されていても、あえて公表を避けたとの指摘もある。
例年の年末総会に比べ、各部門の詳細報告が大幅に簡略化された点も特徴で、今回の会議が党大会の準備作業に重心を置いたものであることを示している。具体的な政策路線は、来年の第9回党大会で明らかにされる見通しだ。
