自衛隊機へのレーダー照射など、日本に向けた中国の示威行為が世論を刺激している。しかし実のところ、中国としても日本の動向に神経質にならざるを得ない理由がある。高市早苗首相の「存立危機事態」発言を待つまでもなく、日本の台湾有事への軍事的備えは着々と進んでいるからだ。
そのひとつが、中国軍に対する多層的な「阻止網」の構築を目指して進むスタンドオフ防衛能力の整備だ。専門家によれば、近日導入される国産ミサイル群は、台湾有事を想定したとされる三つの段階で中国軍の行動を抑止・遅滞する役割を担う。
■ 第1フェーズ:接近段階での進出阻止
中国軍が台湾周辺での示威行動を強め、艦艇部隊が第一列島線へ接近する初動段階では、陸上自衛隊の地対艦ミサイルが主役となる。改良型12式地対艦ミサイルは射程が従来の約200キロから1,000キロ級へと拡大。宮古・石垣・与那国など南西諸島に展開する部隊は、宮古海峡など中国艦隊の“通り道”を遠距離から射程に収める。
中国軍の艦隊が台湾へ向かう前段階で航路を制御する能力を持つことは強力な抑止力につながり、列島線を“開かずの門”にする構想が強く意識されていることをうかがわせる。
■ 第2フェーズ:攻撃段階での水上・揚陸部隊の撃破
台湾本島への圧力が高まり、中国軍が海・空を動員した大規模作戦に踏み切った場合、日本側は長射程ミサイルによる「領域拒否(A2/AD)」を発動する。
海上自衛隊は、自艦から発射可能な長射程ミサイル(新型艦対空・艦対地ミサイル)を配備する計画で、潜水艦にも1,000km級巡航ミサイルを搭載する方針を固めた。これにより、中国海軍が台湾周辺に展開した時点で、列島線の内側から広範囲を攻撃可能になる。
(参考記事:中国の最新鋭空母に「深刻な欠陥」 国内メディアが異例の指摘)
航空自衛隊も、F-35AとF-15改修機に搭載するJSM(ジョイント・ストライク・ミサイル)や、国産の新型空対艦・空対地ミサイルで南西海域の制圧に参加する。複数の関係者によれば、これらは米軍と連携し「中国側の揚陸部隊を列島線内に入れさせない」ための戦力と位置づけられている。
■ 第3フェーズ:台湾侵攻後の戦況逆転を狙う長距離打撃
中国軍が台湾本島への侵攻に踏み切った場合、日本政府が新たに保有方針を示した「反撃能力」の行使が検討対象となる。長射程の国産巡航ミサイルや極超音速誘導弾(HVGP)は、数千キロ級の射程を見据えて開発が進む。
これらの兵器は、中国本土の部隊集結地、指揮統制拠点、補給線などを攻撃目標に含むことを想定しているとされ、「侵攻後も中国軍の継戦能力を削ぐことで作戦全体を鈍らせる」(防衛関係者)狙いがある。
反撃能力の運用には米軍との詳細な調整が不可欠となるが、すでに両国は指揮所の統合化や共同作戦計画の策定を進めており、実際の作戦では十分な連携が図られるはずだ。
