北朝鮮住民にとって1年で最も忙しい時期は田植えシーズン(5?6月)である。慢性的な食糧難に苦しむ北朝鮮当局は、食糧生産を増進させるために住民を農村に総動員している。

この時期になると成人、子どもを問うことなく厳しい農作業が強いられる。一部の地域では市場の営業時間を短縮したり、完全に閉鎖させることもある。住民にとっては二重苦そのものである。

営農期の4月から田植えが本格化しだす5月中旬まで、北朝鮮の各協同農場はビニールシート、肥料、農機具に使用する燃料、苗床などの準備に追われる。これらの準備も農場の各作業班傘下の分組が準備しなければならない。

国家からの財政的な支援はおろか配給すら滞っているのが実情であるため、農場で生産される一部の米を別途確保しておかないと営農準備は不可能である。その米を売ったり交換することで、営農に必要な資材等を準備する。

営農準備が整うと田植えが本格的に始まる。通常5月中旬頃である。北朝鮮の労働新聞は17日、「愛国忠誠と5月のある一日」という記事で、平安南道江西郡の青山協同農場で12日、「意味深い今年初の田植えが始まった」と報道。一般的に農場員は個人別に課題が与えられ、明け方4時から田に出て作業をしなければならない。一部の地域では前日夜遅くまで作業をしていた農民が朝起きられないとし、明け方に鉦を叩きながら村を巡回することもある。

田植えは多くの人手を必要とするため、住民以外に軍人、大学・中学校・小学校の生徒まで動員される。一年の農業を決定する非常に重要な国家的課業とされ、当局は田植えシーズンになると各種宣伝媒体を通して農村動員にまい進するよう奨励する。労働新聞をはじめ朝鮮中央通信などは住民の農村支援のニュースを連日報道する。

ここでも金正恩一家に対する偶像化が登場する。金日成が考案したとされる「主体農法」と金正日の営農準備と関連した指示事項が宣伝される。労働新聞は農村支援関連の記事で「田植えは今年の農業を左右する重要な営農工程」という金正日の発言を紹介し、「偉大な将軍様は歴史のかの日、愛国忠誠の汗を捧げ5月の日々を有用に過ごす時、豊作の秋を迎えることができるとの真理を明らかにされた」と宣伝した。

このように5月になると北朝鮮は兵営国家から営農国家へと変貌する。工場・企業所の労働者は該当の職場ではない稲田に出勤しなければならない。中学生と大学生は学業が中断され、田植え戦闘に動員される。

農村動員期間になると各都、市、郡、里では、勤労意欲を高めるための「宣伝隊」が組織される。田植えが機械を使わず人手でほとんどの作業が進行される重労働であるため、住民は比較的楽な宣伝隊に入ろうと先を争う。

農村地域と都市の一部住民は同期間にも個人的な農業を休むことはできないため、ほとんどの企業所では時間的な便宜を図る。企業所の支配人(社長)出身のある脱北者は「国家配給がない状況で個人農業もできなくなると生存自体が難しくなる。出勤できなくなってはいけないため、機関の責任者も様子を見ながら労働者に時間的に配慮をしている」と話した。

一方、商売で生計を立てる住民は苦痛の連続である。同期間には市場の取締りが強化されるためである。商人は「農村動員期間は地獄のようだ」と不満を見せていると脱北者らは証言する。北朝鮮当局は農村動員期間に商売をした住民に対し「思想闘争」を実施し、配給を減らすなどの経済的不利益を与え統制してきた。

今年初めに韓国に入国したある脱北者は「国家は配給を与えないくせに農業期に個人農業も自由にさせないのは飢え死にを強要していることと同じと住民は不満を抱いてきた。しかし処罰を受けるのは避けたいため、仕方なく農村動員に参加している」と話した。

学生の場合、通常午前9時から作業を開始する。一部は集団課題として作業するクラスもあるが、ほとんどは個人別の課題形式で作業が割り振られる。そのほうが迫ヲもよく責任感も高まるためである。

情報筋によれば、学生らの農村支援は今月初めから開始された。授業を中断し一日中農村に動員されるようになったのは今月中旬から。今回の農村動員戦闘には10歳以下の小学生までが総動員された。成人でも過重な田植え作業に幼い子どもまで動員され、親たちの不満が高まっていると情報筋は語った。(5月16日、デイリーNK報道)

過去にも幼い小学校の生徒が田植えに動員されることは頻繁にあった。当時、幹部らは「匙を持つ者は皆稲田で働くべき」とし、「食糧が多ければ敵と戦っても勝つことができる。適切な時期に田植えができないと収穫量が顕著に減少する」と党の方針を説明した。

しかし今回のように幼い子どもたちを大々的に動員した事例はないと内部情報筋は説明する。彼は「昨年の穀物生産量が少なく、一部の地域では餓死者が大量発生したほどに穀物生産が滞っていた。当局は今年の食糧生産を増加させるため、必死に総力を傾けているようだ。幹部らは『火掻き棒も跳ね回る』ほど忙しいとして子どもたちの動員を奨励している」と話した。

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