食糧難の続く北朝鮮では、北部から秋の収穫が始まった。全国で最も高地にある両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)では、じゃがいもの収穫が始まった。今年の作況は上々だとのことだ。
しかし、人手が足りないため、収穫の適期を逃してしまい、せっかく取れた作物を台無しにしてしまいかねないと懸念する声が上がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
現地の農業部門の情報筋は、両江道農村経理委員会が先月25日から28日まで、内閣農業委員会からの最終的な穀物予想収穫判定を受けたが、全国的に昨年同様に豊作だったと評価したと伝えた。
金正恩総書記は昨年12月の朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議での報告で、「穀物の103%増産を達成した」と明らかにした。
両江道では1ヘクタールあたり、ジャガイモが37トン、トウモロコシが3.6トン、大豆が3.8トンの収穫量となり、トウモロコシの場合、昨年と比べて1ヘクタールあたりの収穫量が、0.4トン上回ったという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そして同月30日、三池淵市の胞胎(ポテ)総合農場のジャガイモ収穫を承認した。また、今月3日からは、道内のすべての農場のトウモロコシの収穫を承認した。まずはトウモロコシの収穫を行い、10日からジャガイモの収穫を始める予定だ。
待ちに待った秋の収穫に、村人たちは大いに喜んでいるが、幹部は頭を抱えている。収穫に当たる人手が足りないからだ。
「両江道は8月20日から目に見えて気温が下がり始め、9月3日の恵山(ヘサン)の最高気温は18度にとどまった。このまま収穫が遅れれば、収穫のできていないジャガイモが霜に当たるかもしれない」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面中央は、収穫開始時期を5日も早めることにした。
別の情報筋は、収穫開始が早められたのは、ともかく人手が足りていないからだと述べた。冷蔵設備が整っておらず、収穫後の長期の保管ができない。そのため毎年、人手をかき集めて収穫を行っていたのだが、今年は7月末の水害被害の復旧に多くの人でが駆り出されており、思うように人が集まらない。
(参考記事:【北朝鮮軍人インタビュー】「軍需工場が全滅した」大規模水害の現地報告)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ジャガイモは霜に弱く、早く収穫して適切な温度が保たれた倉庫に保管しなければならない。例年、霜が降りるのは9月25日ごろから。その前に収穫を終えなければならないが、にっちもさっちも行かない状況だ。
(参考記事:「けっきょく大事なのはカネ」骨抜きになる金正恩の重点政策)少子化による労働力不足が著しい北朝鮮は、農村の人手不足を都市住民の動員や、若者を無理やり送り込む「嘆願事業」で解消しようと努めてきた。あまりうまく行っていないと評されてきたが、水害という著しい災害により、限界に達してしまった。人々を飢えから救う、大切なジャガイモが、霜に当たって腐っていくのを見ているしかないのだろうか。