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北朝鮮の首都・平壌の名物といえば冷麺だ。そして、その老舗として有名なのが「玉流館(オンリュグァン)」である。韓国の歴代大統領が首脳会談に際して訪れるなど、海外でもよく知られている店だ。

平壌にはこれ以外にも、庶民向けの「青流館(チョンリュグァン)」などいくつかの専門店があるのだが、その中の「平南麺屋(ピョンナムミョノク)」という店を、当局の「推し」だという。そして、これが市民や他の店から不興を買っていると、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

平南麺屋は昨年12月に改装オープンした。国営の朝鮮中央通信は、以下のように報じている。

大衆公共サービス拠点―平南麺屋を立派に改築

【平壌12月24日発朝鮮中央通信】平南麺屋が新しく変貌(へんぼう)した。
敬愛する金正恩総書記は、平南麺屋を人民のサービス拠点らしく立派に建設するように全ての問題を解決してやった。
新しく建設された平南麺屋は、建物の外部と内部の全ての様相が独特かつ精巧であり、8の大衆食事室と大同江ビールサービス室、7の厨房をはじめ人民の便宜を高い水準で図ることのできる条件と環境が十分に備わっている。(中略)

朝鮮労働党中央委員会の韓光相部長、党中央委員会の金明訓副部長、李勇敏人民奉仕指導局長、関係部門の活動家たちが23日、改築された平南麺屋の各所を見て回った。---

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人民奉仕指導局は、「大同江沿いにそびえ立つ朝中友誼塔から見える平南麺屋が、新年を迎えて賑わっている雰囲気を演出するために、平壌市が手助けしてフル稼働を保証せよ」との指示を下した。せっかく改装オープンさせた店に閑古鳥が鳴くようでは、党のメンツがつぶれると考えてのものである。

平壌市人民委員会(市役所)は、ランチとディナータイムに空席ができないよう、市内の行政機関、企業所などにクーポンを配布することにした。北朝鮮の国営食堂で食事をするには、このようなクーポンを持って何時間も並んでようやく入店が認められる。

(参考記事:ビールの「転売ヤー」となってコロナ禍を生き抜く北朝鮮の貧困老人

しかし、このような「官製推し」が住民の反感を買っている。他で食事をしたくとも無条件で平南麺屋に行かなければならず、郊外に住んでいる人は、仕事も何も放り出して丸一日を費やして行ってこなければならないからだ。

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一方、玉流館や青流館、平壌麺屋など他の冷麺専門店は、客を平南麺屋に取られてしまい、新年から集客計画(ノルマ)に黄色信号が灯ることになり、閉口している。

情報筋によると、平南麺屋を無理やり繁盛店に仕立て上げている裏には、「親会社」どうしの利権争いもあるようだ。平南麺屋は人民奉仕指導局が経営母体であり、ライバルの清流館は朝鮮労働党中央委員会の錦繍山(クムスサン)議事堂経理部の傘下にある。

長らく集客計画を達成できていなかった人民奉仕指導局は、政治力を行使して、売上拡大を図ったものと見られる。