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児童文学者として知られる鈴木三重吉や、教育者の芦田惠之助の影響を受けて各地で始められた「生活綴方運動」。子どもたちが見たもの、感じたものを文章に綴り、自分自身を見つめ直すことで、学習意欲や生きる力の向上に繋げようというものだ。これは、同時代にドイツ・ハンブルクのリヒトワーク学校で行われた実験的教育と軌を一にするものだ。

意図や形式に違いはあれど、同様の教育は世界各地で行われている。北朝鮮第2の都市、咸興(ハムン)市内のある小学校では、子どもたちの文章力を向上させるため、毎日日記を書かせるという宿題を出した。それを読んだ親はもちろん、この話を知った市民までむせび泣いているという。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

子どもたちは経験したことや特定の状況で感じた心情を日記に綴った。その中には、厳しい暮らしの中でも頑張っている母親への感謝を書いたものもあった。情報筋は、その一部を抜粋して伝えた。

お母さんは、毎日お腹がいっぱいだとかお腹が痛いと言ってご飯を少ししか食べなかったり、全然食べなかったりします。しかし、私は知っています。早く大きくなって幹部になり、お母さんを助けてあげたいです。

他の子は新しい靴は履かなくても、(自分のように)ボロボロになった靴は履きません。友だちにからかわれたり、笑われたりするかもしれないから学校に行きたくありません。でも、お母さんに言えば、胸を痛めて泣くかもしれません。だから、恥ずかしいけど何も言わずに(ボロボロの)靴を履いています。お母さんが泣いたら私も泣きたくなります。早く休みになればいいのに。

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また、別の児童は、両親への感謝の気持ちを綴った。

今日はお母さんの誕生日です。お父さんが朝早く起きて、トウモロコシとコメが混じったご飯に、豆腐のスープを作ってくれたので食べました。お母さんはおいしいと笑いながら食べました。お母さんは、私やお父さんの誕生日には、お肉、お餅、ケーキを出してくれて、新しい服もプレゼントしてくれて、ハレの日のようにお祝いします。

でも、お母さんの誕生日は普通の日のように過ぎていきます。お母さんはお金がもったいないからと、誕生日をお祝いしないことを私は知っています。私も早く大きくなって、お母さんのように、お母さんの誕生日においしいものやきれいな服を買ってあげたいです。

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担任教師は子どもたちに、毎日綴った日記を、週末に家に持ち帰り、両親のサインをもらってくるように言った。親たちは当初、面倒に思っていたが、目を通してみると、子どもなりに親に気を使っていたり、感謝の気持ちが綴られていたりして、むせび泣いたという。

(参考記事:「親として情けない」金正恩“お嬢様”の陰で漏れるホンネ

教師の意図は、作文を親に読ませることで、子どもたちに熱心に取り組ませ、スペルや文法に間違いがないかと親子でチェックすることで、親が子どもの教育に関心を持つように導くことだ。北朝鮮の小学校教師がよく使う教育方法だという。

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北朝鮮の教育システムは、実用性のない思想教育に偏重し、子どもをダシに使って親から金品を巻き上げるなど問題だらけではあるが、このような肯定的な側面もあるのだ。

(参考記事:【北朝鮮の教師インタビュー】生徒の親からの「ワイロ」に依存した生活もコロナで破綻

まだまだ子どもだと思っていたわが子の成長ぶりを知った親たちは、「もっと頑張って働こう」と元気をもらい、担任教師にも感謝の言葉を伝えた。この美談はあっという間に町中の人々に広がった。

だが、「いい話」と受け止める人ばかりではない。「食べたい物、欲しい物を親にねだって駄々をこねる年頃なのに、生活苦のせいでアダルト・チルドレンになってしまった」として、「可哀想だ」との反応を示す人もいたと、情報筋は伝えている。

金正恩総書記は、貿易に依存する経済の現状を無視して、新型コロナウイルス対策として国境を閉じてしまった。また、国民の多くが現金収入を得る場である市場に対する締め付けを強化した。それが深刻な経済難、食糧不足をもたらした。

上記のリアクションは、「人民の父」と称賛される金正恩氏が、実は毒親であることを遠回しに批判したものと言っても過言ではないだろう。

(参考記事:金正恩の知られざる「毒親」ぶり…孤児を都合よく使い捨て