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北朝鮮では一般的に、金正恩総書記の外国訪問、あるいは外国首脳の北朝鮮訪問が行われる際に、国境警備が強化される。先日の金正恩氏のロシア訪問の時も例外ではなかった。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、中国との国境に接し、ロシアとの国境にも近い会寧(フェリョン)の送金ブローカーは、今月13日から活動を取りやめた。

保衛部(秘密警察)と安全部(警察署)が、金正恩氏のロシア訪問中のスパイ、反動分子の策動に備えて、24時間体制で特別警戒勤務を行ったからだ。

送金ブローカーたちは、中国や韓国に住む脱北者の仕送りを、北朝鮮に残してきた家族に伝達する役割を担っている。国境の川を渡ったり、北朝鮮ではご法度の中国キャリアの携帯電話を使って商売するため、国境警備が強化されると、逮捕のリスクが高まる。そのため、おとなしくしているしかないのだ。

「元帥様(金正恩氏)が留守の間は住民監視が強化されること、中でも通信の盗聴が強化されることは誰でも知っている。送金ブローカーはそんなときに下手に動いて捕まると大ダメージを受けるため、誰から強いられたわけでもなくとも、活動を停止する」(情報筋)

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金正恩氏は列車を利用してロシアに入国したが、その途上で咸鏡北道を通過している。会寧からは多少距離があるが、それでも監視が強化されるのだ。他の市や郡に向かうときに必要な旅行証(国内用のパスポート)も10日から制限され、住民は急用があっても足止めを食らった。

しかし、それもつかの間。金正恩氏が19日に帰国した翌日から、保衛部、安全部ともに通常勤務体制に戻った。それを見計らって送金ブローカーは21日から活動を再開した。

送金ブローカーは、北朝鮮に外貨を流入させ、市場経済を動かす大きな役割を担っているが、外貨流通量や貿易を完全に把握したい国にとっては厄介な存在だ。それだけではない。携帯電話で国外とやり取りすることで、国内情報の国外流出、国外情報の国内流入を招く。そこで、以前から繰り返し取り締まりが行われてきた。

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2020年1月から今年7月まで続いたコロナ鎖国の状況下では身動きが取れなかったが、国が開かれた今では、また以前のように活動している。

(参考記事:貿易再開を前にして携帯電話の取り締まりを強化する北朝鮮

送金ブローカーは、バックに裁判官や地元の保衛部の幹部を付け、逮捕されそうになっても助けてもらったり、たとえ逮捕されたとしても事件そのものを揉み消してもらったりする。その見返りに多額のワイロを定期的に掴ませる共存共栄関係にある。

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国は、そのしがらみを断ち切るために、別の部隊を国境沿いの地域に投入して警備に当たらせたが、結局は元の木阿弥になったようだ。保衛部も、コロナ期間中は以前のようにワイロを得られず、財政的にかなり困窮したようで、送金ブローカーが元のように活動を再開したことで、胸をなでおろしていることだろう。

(参考記事:北朝鮮の秘密警察が組織ぐるみ「携帯電話マフィア」の内幕