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北朝鮮全土でトウモロコシの収穫が進んでいる。例年なら、それに合わせて市場での取引価格も下落するのだが、今年に限ってはさほど変動が見られない。計画された収穫量より少なかったからだ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内の价川(ケチョン)市内の農場は、今年のトウモロコシ収穫量を25万トンと見積もり、上部に報告していた。ところが、実際は21万トンに過ぎなかった。あまりの少なさに農場の幹部は呆然としているという。

この予想値というのは、収穫直前に現場の状況を見た上で算出するもので、多少の差はあっても、16%もの差が出ることは通常考えられない。これを問題と見た朝鮮労働党平安南道委員会組織部、平安南道農村経営委員会、平安南道検察所が、市内の農場を対象に大々的な検閲(監査)に乗り出した。

4万トンものトウモロコシが消えてなくなった理由は未だ明らかになっていないが、農民たちの間では、当局がトウモロコシ収穫を急がせ、例年より多くの人を動員して収穫に当たらせたことが原因ではないかと、語られている。

「トウモロコシより収穫する人のほうが多かったので、トウモロコシがなくなるのは当然のことではないかというのが農民の話」(情報筋)

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収穫に動員された人々は、無断でトウモロコシをいくらか持ち帰るのが、半ば常識となっている。だから、動員された人の数に比例して、消える量も増えたということだ。そもそも、動員先では食事も提供されず、給料も支払われない。その見返りにいくらか持って帰りたくなるのは当然のことだろう。

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北朝鮮では、物事を速く進めて、計画より前倒しで達成するのを良いこととする「速度戦」という考えが広く浸透している。内閣の農業省は、猛暑の影響を鑑み、収穫を遅らせよとの指示を出したが、金正恩総書記はそれを覆し、通常の日程で収穫を行えとの命令を下した。

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朝令暮改に振り回された農場や地方政府は、ともかく命令を遂行するために、多くの人を動員して収穫を速く進めた。そのせいで結局、収穫量が減ってしまったのだ。

かくして動員された人々は、棚ぼたでトウモロコシが手に入り、食いつなぐことができたが、下手をすると刑務所送りになりかねない農場幹部や地方政府の農業部門の幹部にとってはたまったものではない。各農場では、動員者のネコババを防ぐために、帰宅時のボディチェックを強化するなど対策に乗り出したとのことだ。

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