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210万トン――。これは、米農務省が先月発表した報告書で示した、今年の北朝鮮の米収穫量の推定値だ。1ヘクタールあたりの収穫量は4.18トンで、過去5年間の平均値4.62%よりさらに減少している。一方で、トウモロコシの生産量は230万トンで、1ヘクタールあたりの収穫量は3.93トンだ。例年の水準を維持している。

一方、平安北道(ピョンアンブクト)の幹部が今年1月、米政府系のラジオ・フリー・アジアに明かした今年の穀物生産量目標は760万トン。コメは1ヘクタールあたり8トン以上、トウモロコシは10トン以上の収穫をあげよとの指示もあった。収穫が終わってみないとわからないが、目標はもちろん、年間需要量の575万トン達成も絶望的だ。

現場からも心配の声が上がっている。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

今年の北朝鮮は、春の干ばつに夏の猛暑と大雨と、天候に恵まれなかった。そこに加え、ゼロコロナ政策としての国境封鎖により、肥料や農薬などが中国から輸入できなかった。

また、当局の下す無駄な指示も、農民の足を引っ張った。情報筋は「正確な数値は秋の収穫が終わらなければわからない」としつつも、今のところ、例年より少ないとの見方が多いと伝えた。

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(参考記事:政府の無理な指示を「無視」で乗り切る北朝鮮の人々

穀物収穫量は、これから訪れる冬とその後の春の生活にも影響を及ぼす。収穫が少なければ、国からの分配量が減る。前年の収穫で食いつなぎ、麦の収穫が始まる来年6月まで乗り切らなければならないが、現状の見通しは非常に厳しい。

「年内に食糧が底をつき、苦しい生活をしなければならないのかと心配する人が少なくない」(情報筋)

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たとえ収穫量が多かったとしても、農民の生活が苦しいことには変わりがない。国や軍に持ち去られる量が増えるだけだからだ。

「豊作でも凶作でも越冬用の食べ物は常に充分ではなかった。収穫量が多ければ、その分、軍糧米(軍に納める穀物)などありとあらゆる名目で奪われ、収穫量が少なければ、『愛国心を発揮せよ』と、自発的な行動を装った愛国米、突撃隊支援の食糧の献納が強いられる」(情報筋)

(参考記事:軍と国家が一斉に農場を襲う、北朝鮮「食糧難」の末期症状

北朝鮮の今年の穀物生産量を巡っては、米国と韓国では見方が割れている。

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統一省の関係者はデイリーNKの取材に、「今年上半期に食糧難があったものと見ている。絶対量より流通過程の問題が大きかった。しかし、それ以降は北朝鮮が食糧輸入を増加させ、小麦や大麦などの収穫もかなり進んだため、食糧状況に変化がある可能性がある」と述べた。

北朝鮮では、ロシア産の小麦粉と中国産のコメが市場に出回り始めている。一方で、RFAの情報筋が伝えた、14日のコメ1キロの価格は8000北朝鮮ウォン(約136円)で、史上最高値を更新した。もともとこの時期はコメの値段が1年を通して最も高い時期だが、この高値は、コメの流通量が何らかの原因で増えていないことを示している。

(参考記事:餓死者発生の北朝鮮に大量流通し始めた「ロシア産小麦粉」