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ただでさえ深刻な食糧不足にあったところに、前年の収穫の蓄えが底をつく「ポリッコゲ」(春窮期)を迎えた北朝鮮。

各地からは深刻な飢えの状況が伝えられている。子どもたちは学校にも行けず、家族のために毎日山に入って山菜採りを余儀なくされる事態に。

一方で当局は、穀物輸入を盛んに行っていると伝えられている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:「僕が山に行かないと飢えちゃうよ」子供が食べ物を求めさまよう北朝鮮の惨状

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、5月中旬から新義州(シニジュ)一帯で中国から輸入されたと見られる小麦粉が多く出回っていると伝えた。

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2キロ入りの袋で、表面にはロシア語と中国語の表記がある。製造はロシアのノボクズネツク小麦粉工場、輸入は泰和翔(大連)供給鍵管理有限公司となっている。中国経由で輸入されたロシア産の小麦粉で、賞味期限は生産日から12カ月となっているが、日付は記載されておらず、どれほど古くなったものかわからないと情報筋は述べた。

販売は国営の糧穀販売所で行われているが、1キロあたり8000北朝鮮ウォン(約128円)。今年1月、2月に売られていた小麦粉と比べて1000北朝鮮ウォン(約16円)安くなっている。その当時、コメは4500北朝鮮ウォン(約72円)、トウモロコシは2000北朝鮮ウォン(約32円)で、小麦粉にはとても手が出せなかった。

ポリッコゲで食糧価格の高騰と飢餓が広がることが懸念されていたが、小麦粉が出回るようになったことで、多少の安堵感が流れているという。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、清津(チョンジン)市内の各区域の糧穀販売所で、同じロシア産の小麦粉が販売されていると伝えた。これに伴い、市場の小麦粉の価格も下落した。

この小麦粉がどのような経緯で、いつ、どこから輸入されたかは詳らかでない。

「中国とロシアが共同で支援したのか、わが国(北朝鮮)が主導して輸入したのかわからない。しかし、輸入小麦粉が出回るようになって価格が下落し、ほとんどの住民は胸をなでおろしている」(情報筋)

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また、当局は安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)、検察所、学校、公共機関の勤務者に、途切れ途切れながらも優先的に食糧配給を行ってきたが、5月の配給に小麦粉は含まれておらず、従来どおり、コメとトウモロコシだけだ。

(参考記事:金正恩の「親衛隊」も食うや食わず…北朝鮮の末期症状

北朝鮮では今、ひどい地域だと、人民班(20〜40世帯)の数世帯が餓死するほどの事態になっていると伝えられる。農村での田植えや建設現場への動員にも深刻な影響が出ており、社会的な不満も溜まっている。

コメや小麦粉を大量輸入することで価格を下げ、不満を抑えると同時に、「国営米屋」の糧穀販売所で販売することで、穀物流通や価格決定の主導権を国の手に取り戻そうとする意図があるものと考えられる。

ただ、この手の輸入は、急場をしのぐための一過性のものに終わることが多く、人為的な価格引き下げがいつまで可能かはわからない。

(参考記事:深刻な食糧難でも北朝鮮のコメ価格が下がる理由