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ここ20年来、地球温暖化による影響が激しさを増していると言われている朝鮮半島。韓国気象庁の統計によると、周囲の海水温は2019年までの100年で0.55度上昇した。2040年までにさらに1.0度から1.2度上昇するとの研究結果も発表されている。中でも、西海(黄海)の海水温の上昇は1.5度に達すると予測されている。

また、韓国の年平均気温は1908年の10.4度から、2022年には13.2度に上昇している。今年の気温を見ると、5月から異常高温が始まり、35度を超える猛暑日が続出し、2018年に次ぐ猛暑となっている。

当然のことながら、北朝鮮の人々も猛暑に苦しめられている。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は1日、「災害性気候に対処するための事業を強く推し進め続けよう」との見出しの記事で、農業、鉱業の現場に対して暑さへの対策を取るよう勧告し、老人や心臓の弱い人は外出を控え、野外での活動時には帽子や日傘を使うよう訴えている。

この「災害性気候」という用語は1年中使われ、特に夏は使用頻度が増えている。そんな中、北朝鮮の人々はいかにして猛暑を乗り越えているのだろうか。

(参考記事:国民の感染症・熱中症よりも「脱北リスク」を気にする北朝鮮

デイリーNKは、平壌市内中心部に住む幹部のAさんと、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の海辺の地域に住むBさん、Cさんの3人にインタビューを行い、いかにして夏を過ごしているかを質問した。

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「万民は平等」を謳う北朝鮮だが、平壌の超一等地に住む幹部と、地方に住む庶民の暮らしからは、激しい格差社会であることがうかがい知れる。

ー暑さが続いているが生活に支障は?

平壌の幹部Aさん(以下Aさん):例年よりは暑いが、生活には特に支障はない。

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咸鏡南道の庶民Bさん(以下Bさん):あまりに暑くて外出が怖い。日常生活に影響が出るほど暑い。

咸鏡南道の庶民Cさん(以下Cさん):あまりにも暑くて少し動いただけで全身が汗まみれになり、息が詰まる。水道水がでれば行水でもするのだが、あまり出ない。

ーどうやって暑さを避けている?

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Aさん:特に避けることはない。バスで通勤しているが、車内はもちろん、オフィスにもエアコンがあって涼しい。家にもエアコンがある。平壌は地下鉄も涼しいので、することのない人は地下鉄の駅で涼んでいたが、7.27(戦勝節、朝鮮戦争休戦協定締結日)以降はさらに暑くなり、取締官と糾察隊(取締班)が駅構内をパトロールして人々を取り締まっている。

Bさん:冷たい水に足を漬けたり、氷水を買って飲んだりして涼んでいる。海辺は生臭い匂いが漂い、ハエがあまりにも多いので、建物や木陰に座っている。夜には海辺のほうが涼しいので、涼みに行く。

Cさん:暑さは避けようがない。扇風機があっても停電で使うこともできない。12ボルトの(充電式)扇風機は、すぐにバッテリーがなくなるのであっても意味がない。貧しい人はひたすら耐えるだけで、金持ちは発電機を回して扇風機を使う。

ーエアコンを使う家は多い?

Aさん:エアコンのある家は増えた。だが、停電になれば無用の長物だ。自分の住んでいる地域は、電力が安定して供給されているので、エアコンを使っている。停電の多い地域に住む金持ちは、何軒か共同で発電機を回してエアコンを使う。そうやって、最も暑い半月から1ヶ月を過ごす。

(参考記事:電気がない北朝鮮で「エアコン爆買い」が起きる独特の事情

Bさん:エアコンがあるのは金持ちや幹部の家だけだ。自分たちのような庶民は、夜通しうちわで扇ぐしかなく、一生そうやって夏を過ごす。数年前に買った扇風機を使っても、熱風がくるだけだ。夏と冬にいちばんかわいそうなのは、外で暮らすコチェビ(ホームレス)だ。

Cさん:エアコンはトンジュ(ニューリッチ)や幹部の家にしかない。普通は扇風機を使うが、停電で無用の長物だ。

ー避暑に行く?行くとしたらどこ?

Aさん:行ってきた。避暑地として人気なのは元山(ウォンサン)だ。それから麻田(マジョン)、七宝山(チルボサン)、妙香山(ミョヒャンサン)、龍門大窟、正方山(チョンバンサン)、龍岳山(リョンアクサン)の人気が高い。海辺や川、渓谷に行くことが多い。スケジュールは2泊3日から1週間ほどだ。家族と行くこともあれば、同じ部署の同僚と行くこともある。行ったら海水浴、砂むし風呂、冷たいビールを楽しむ。平壌では、プールが夜間営業するときに行くこともある。

(参考記事:北朝鮮の「スパリゾート」、タダ券配りまくってなんとか営業再開

Bさん:カネと食べ物がなければ避暑など行けない。庶民は避暑なんて考えも及ばない。幹部やトンデコ(闇両替商)、タバコ屋のボスといった金持ちに聞いてみると、食べ物持参で道内の海辺で海水浴をして、一杯やるという。何日も避暑に行くのは幹部くらいだ。

Cさん:避暑など平壌の人が考えることで、自分たちのような(地方に住む)庶民は、どうやって生き残るかを考えるので精一杯だ。どこかに避暑に行く時間もなく、考えたことすらない。最近は、それなりに食事ができているというだけで、保衛員(秘密警察)、安全員(警察官)、情報員(地域に潜むスパイ)がやってきて、カネの出所はどこか探ろうと目を光らせる。だから、人の目につかないように避暑に行く人もさほど多くない。以前は弁当を持って海水浴をしていた。

ー熱中症で倒れる人は多い?治療は?

Aさん:暑すぎて倒れる人が多く、特に老人が多い。だからといって病院に行く人は見たことがない。塩気のある冷製スープをいっぱい飲めと言われるだけで、治療などはしない。救急車を呼んでも2時間は来ない。ここ(北朝鮮)には、そんなシステムはない。熱中症になっても電話で問診をして終わりだ。

Bさん:倒れる老人が多い。治療など期待できず、キュウリの入った冷製スープをいっぱい飲んで塩気と水分を充分に取るように言われるだけだ。やることがない老人は家の前にゴザを敷いて、日がなおしゃべりに興じるが、人民班長(町内会長)に(熱中症を避けるために)家に戻れと言われても、「家の中は暑いから」と帰ろうとしない。

Cさん:家族の生計を担っている女性たちが、猛暑で出歩き、道端で倒れ込むのを1日に1〜2回は見かける。だからといって特別な治療などしない。倒れているなら、冷水をかけたり、冷水で絞ったタオルで体を拭いたりする。病院に治療方法があったとしても、カネがなければ行けない。

(参考記事:北朝鮮が病院に対する実態調査「医師からのワイロ要求が常態化」