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北朝鮮の通貨「ウォン」(以下、北朝鮮ウォン)の現行紙幣は5北朝鮮ウォンから5000北朝鮮ウォンまで9種類あるが、実際に使われているのは100北朝鮮ウォン以上のものだ(1000北朝鮮ウォンは約17円)。

硬貨も4種類存在するものの、いずれも額面が100北朝鮮ウォン以下であることから、ほとんど使われていない。インフレのせいだ。

デイリーNKが調査した、平壌の市場でのコメ1キロの値段を見ると、貨幣改革(デノミネーション)直後の2009年12月15日には44北朝鮮ウォン。それが翌年1月4日には55北朝鮮ウォン、6日は120北朝鮮ウォン、14日には210北朝鮮ウォンと、恐ろしい勢いで上昇した。そして、12月13日には1250北朝鮮ウォンになった。貨幣改革の失敗により激しいインフレが起こったのだ。今年8月6日には5700北朝鮮ウォンとなって硬貨いる。

だが、当局は外貨使用禁止を強調すると同時に、硬貨を使うように奨励し始めた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、当局が北朝鮮ウォンを使用するように強く呼びかけており、外貨使用が摘発されれば、持っている現金と商品のすべてを没収する措置を取っていると伝えた。

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当局は今までもしばしば外貨使用禁止令を出してきたが、実効性がなくその度にウヤムヤになってきた。昨年10月にも外貨使用禁止令を出したが、取り締まりにもかかわらず、あまり守られていない。ちなみに、現在北朝鮮国内で流通しているのは、主に中国人民元で、米ドルはあまり見かけないと情報筋は伝えている。

(参考記事:度々の禁止令にも再び増える北朝鮮国民の外貨使用

そして、当局は銀行に1000北朝鮮ウォン硬貨を大量に供給した。外貨と両替して使わせるためだ。銀色で表面には国章、裏面にはハングルで1000ウォンと刻まれている。情報筋によると、500北朝鮮ウォン、1000北朝鮮ウォンのコインは以前から存在したようだが、今回のものとはデザインが異なる。

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しかし、誰もこれに関心を持とうとしない。

銀行で1元(約20円)を両替すると1260北朝鮮ウォンになるが、闇両替商だと1280北朝鮮ウォンにしてもらえる。たった20北朝鮮ウォンの差だが、250元(約5000円)を両替すると、コメ1キロ分の差が出る。これでは誰も銀行を使おうとしないだろう。さらに、両替で硬貨が渡されるのもよくない。「コインを拾うとその日は運が悪い」との俗説もあるからだ。

北朝鮮の人々はそもそも、上述の貨幣改革のときに、銀行に強制預金させられた経験から銀行を全く信用していない。また、銀行で両替するには名前、住所、職場、電話番号、両替額を用紙に書かされる。資産の額が国に筒抜けになってしまい、出処を探られるリスクがあるのだ。国は「カネの出処は問わない」とは言うものの、そんな言葉を信用する人はいない。

(参考記事:「銀行に預金するのはバカ」との不名誉克服を目指す北朝鮮の金融システム

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一方、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、外貨使用禁止令に基づく取り締まりが厳しく行われている状況を伝えた。

市場では今月から外貨を一切使えないようになり、摘発されれば受け取った商人のみならず、所属する集団も制裁を受けることとなった。この「集団」とは靴、雑貨、工業用品、海産物、食品など、扱う商品ごとに存在する業種別グループのことだが、摘発時にはその集団全体が商品を没収され、1カ月間の営業禁止措置を食らうため、違反のないように相互監視を行っている。

国が外貨使用禁止令を出して取締を行う理由について、情報筋の見方は次のようなものだ。

「銀行に現金が入らず、国が貿易をできない。ほとんどの外貨は個人の手中にあるため、国が使えない」

それでも銀行を使おうとする人はほとんどいない。金持ちや資産を多く持つ商人は、手中にある北朝鮮ウォンを使い、持っている外貨を一切使おうとせず、取り締まりが終わるタイミングを見計らっている。

ただ、全くお手上げというわけではない。若者たちの間では、外貨でチャージするQRコード決済が広がりつつある。普及率は平壌で6割、地方で4割に達しているという。

(参考記事:北朝鮮の若者の間で普及が進むQRコード決済