北朝鮮は2020年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために国境を封鎖した。世界保健機関(WHO)が今年5月、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言を終了する」と発表した後も、国境の封鎖を続けている。
これにより、中国への依存度が非常に高い北朝鮮経済は大きな打撃を受けた。北朝鮮国民の多くが、中国から輸入された物品を販売、購入して暮らしているが、中でも密輸業者、商人、そして北朝鮮と中国を行き来して物品を輸送していた運送業者のダメージが非常に大きかった。
デイリーNKは最近、北朝鮮の新義州(シニジュ)と中国の丹東の間でトラックドライバーをしてきたAさんとのインタビューを行った。
Aさんは、国境が封鎖される2020年1月まで10年以上、日本製の40フィートの大型コンテナトラックに乗り、新義州と丹東を行き来していた。トラックは30年近く経ったもので、外側の鉄板にサビが目立つが、エンジンはまだまだ使えて走行にも問題がないという。
個人的にトラックを購入した彼は、運輸事業所に籍を置き、一定の費用を支払っていた。車両の個人所有が許されないため、事業所の名義を借りて運転する形だ。国境封鎖までは、6〜7割は会社からの注文された品物を、残りは個人業者の品物を運んでいた。
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多忙な時には最高で月2万元(約40万円)という、北朝鮮の一般国民では考えられないほどの高収入を得ていたが、国境封鎖後は完全に途絶えてしまった。人々が飢えに苦しむ中、Aさんは蓄えを切り崩しながら暮らしてきた。
以下、Aさんとの一問一答
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ー コロナによる国境封鎖が続き、現在はまったく収入がない?
トラックドライバーAさん(以下A):ドライバーたち、中でも男性は皆が暇だった。女性は商売をしていたが、生活費になるほどは稼げない。人の目があるのでブラブラしているわけにもいかず、働いているフリをしていた。実際は、10年以上ドライバーをして貯めたカネを取り崩して暮らしていた。それ以外には、たまに貿易会社から車を貸してほしいと言われ、そのレンタル料を受け取っていたくらいだ。
ー 最近、北朝鮮国内では地域間の移動統制が緩和され、輸送も比較的活発に行われているというが、国内輸送の注文は増えた?
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面A:今年に入って昨年よりは仕事が少し増えた。月に多ければ5回ほど仕事が入ってくる。だが、糊口をしのぐ程度だ。トラックのレンタル料や、新義州に入ったものを平壌や他の地域に運ぶだけでは、さほど儲からない。中国との貿易がうまくいかないと稼げない。貿易会社から注文を取り、個人業者からの注文の品も輸入しなければ稼げないが、今の状況では無理だ。
ー コロナ対策の徹底が要求された時は、丹東から輸入された荷物を義州(ウィジュ)飛行場(の消毒場)に運んで消毒していたが?
A:昨年までは、新義州に入った荷物を義州飛行場に運ぶ仕事をしていた。しかし最近は、新義州から平壌に直行するようになった。新義州や義州では品物を消毒していないようだ。以前ほど徹底していないということだ。他の国ではマスクもしていないというのに、なぜ私たち(北朝鮮)だけが国境を閉ざし続けているのかわからない。
(参考資料:【内部資料】北朝鮮、少なくとも37カ所をコロナの恐れで地域封鎖)
ー 新義州と丹東を結ぶトラックの運行がまもなく再開されると予想されていたが、未だに再開できていない。内部の布置(布告)はあった?
A:布置は今までもしばしば下されていた。先月初めには、桟橋が再開すると税関から話があった。5月には貿易関係者を対象とした講習にも参加した。何度も国境が開くと言われたのに未だに開かれないので、いつ開くのか予想は難しい。それでもトラックでの貿易が再開してこそ、国の貿易が息を吹き返す。貨物列車は運行時間が決まっているが、トラックはいつでも出入りできる。もう少し時間がかかっても、必ず開かれると思っている。
(参考資料:北朝鮮と中国の双方でまたもや出回る「そろそろ貿易完全再開」の噂)