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昨年1月から運行が再開された、中国の丹東と、北朝鮮の新義州(シニジュ)を結ぶ国際貨物列車。中国国内での新型コロナウイルス感染の再拡大で一時期運行が中断されたが、その時期を除けば概ね通常通り動いている。

とはいえ、北京や丹東と平壌を結び、多くの行商人が利用していた国際旅客列車や、それ以外の貨物列車、そしてトラックが国境を越えて頻繁に行き交っていたコロナ前の状況までには戻っていない。

そんな中、北朝鮮当局が新義州税関に対して業務を正常化せよとの指示を下したと、デイリーNK内部情報筋が伝えた。

これはトラック輸送を含めたすべての陸路での貿易の完全な再開を意味するものだと情報筋は説明した。北朝鮮と中国を結ぶ鴨緑江大橋(朝中友誼橋)では現在、通過する乗用車やワンボックスカーはたまに見られるが、トラックやバスはまず見かけない。これらの通行が再開されるものと思われる。

また、別の情報筋は、中国の丹東海関(税関)は先月から、北朝鮮との貿易に携わったことのある貿易会社の従業員を対象に、国境地域でのみ使えるパスポートの一種である渡江証の発行を始めたと伝えている。先月中旬の時点で、ドライバーや荷物の積み下ろしをする人員など、20人に発行されている。これも、鴨緑江大橋を通じた貿易の正常化に向けた動きと見られる。

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一方、朝鮮労働党の平安北道(ピョンアンブクト)委員会は、先月27日から5日間の予定で、道内の貿易イルクン(幹部)を対象にした講習会を開いている。貿易法や施行細則、違反時の処罰について重点的な説明が行われている。

同様の講習会は、同じように中国と国境を接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)でも昨年11月に行われ、過去20年以上にわたって行われてきた、地方や個人による自由な貿易のやり方を否定し、国が貿易を司る「国家唯一貿易体制」の樹立が告げられたが、平安北道での講習会でも国家唯一貿易体制の規律について説明され、その統制に服従することが強調された。

国が中央集権的な貿易体制を目指すことで、今まで貿易に頼ってきた国境沿いの地域は深刻な不況に襲われている。飢餓から脱するために貿易が完全に再開されれば、必ずどこかに生じる「針の一穴」を少しずつ広げて、密輸を行おうとする人が増えることは想像に難くなく、「国家唯一貿易体制」の樹立が成功するかは不透明だ。

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国境が再び開かれることで、今まで自国民の帰国すら原則拒否していた状況にも変化が生じそうだ。

契約期間を大幅に超えて中国への滞在を続けている派遣労働者の総入れ替えが行われるものと見られている。ただ、10万人を超えると言われる労働者を帰国させ、中国生活で慣れた自由な考え方や行動を改めさせる、「ムルペギ」(水抜き)と呼ばれる思想教育を行うには非常に時間がかかるため、人員の入れ替えは段階的に行われるものと思われる。

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また、貿易代表部の駐在員の入れ替えも行われるとの話が出ている。まずは一度帰国させ、過去3年間の実績の総和(総括)が行われ、その結果により褒賞や処罰を下されることになる。

コロナにより中国でも社会システム全体がストップする事態がたびたび起き、自由に貿易ができない状況下で、好業績を収めた者はごく一部に限られるだろう。処罰を受け、奥地の農村に流刑され、一生貧困から抜け出せない暮らしを強いられることを恐れた一部の人は、脱北を企てている。それにより今度は、幹部の責任問題にも発展している。

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脱北して中国で逮捕され、強制退去命令を受けるも、北朝鮮側から受け入れを拒否され、中国での勾留が続いていた人々も、順次送還されるだろう。コロナのおかげで逆に助かっていた人たちだが、順次帰国させられ、処罰を受けるものと思われる。

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貿易の再開という話は、あまりの期待の高さから出ては消え、出ては消えを繰り返している。実際に国境が開かれ、貿易が再開されるかは、実際にそうなるまではわからない。