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北朝鮮は昨年5月12日、国内において新型コロナウイルスの感染者が発生したことを公式に認めた。そして2日後の14日午後6時の時点で、全国の感染者が168人だと発表した。それ以降は、感染者とは呼ばず有熱者(発熱患者)という表現を使い、発表を行った。

さて、実際はどうだったのだろうか。

デイリーNK取材班は最近、北朝鮮の国家非常防疫司令部が毎日まとめていた「悪性ウイルス伝播状況報告」の入手に成功した。

まず目を引くのは次の項目だ。

去る4月25日から6月26日まで平壌市で悪性伝染病を経過した220人を対象に、発熱前に現れた臨床症状を分析したところによると、頭痛、徐脈、節々の痛み、倦怠感を訴える者が多く(以下略)

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ここに現れる「経過した」という表現は、悪性伝染病、つまりコロナに感染したが、完治したという意味として読み取ることができる。徹底的な入市規制を敷いていた平壌でも、2カ月間で220人の感染者が発生したと見られる。

また、報告書には、感染者発生に関する断片的な情報が記されている。

7月2日には全国的に2690人に対するPCR検査を行い、羅先(ラソン)市では4人が陽性と確認された。また、国家科学院生物工学分院が24基地で発生した悪性ウイルス感染者2人に対する遺伝子のDNA配列の分析を行い、オミクロンBA.2株に感染したことを確認した。

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なお、「24基地」とは、中国との国境に接している平安北道(ピョンアンブクト)の義州(ウィジュ)飛行場に建設された、輸入品を消毒するための大規模施設「国家西部物流総合処理場」のことを指す。

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北朝鮮の極端なゼロコロナ政策の一環として行われた「封鎖令」だが、昨年4月から12月末までで、少なくとも37カ所で行われたことが報告書の分析からわかった。

この封鎖は一律にロックダウンを指すのではなく、完全封鎖、封鎖、2級封鎖、臨時遮断の4段階に分かれている。これは、非常防疫法に明記された特級、1級、2級、3級の封鎖に相当するものと思われ、完全封鎖(特級)が、外出も禁じられる完全なロックダウンに相当すると思われる。

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他の封鎖についてだが、報告書に記載された事例では、

  1. 昨年4月、中国との国境に面した平安北道の朔州(サクチュ)郡の清城(チョンソン)労働者区で、発熱患者発生により、4日間の封鎖(1級)を行った。
  2. 昨年5月、黄海北道(ファンヘブクト)の銀波(ウンパ)郡の新村里(シンチョンリ)で、農場員がビラに触れたため、当該地域の2級封鎖を行った。
  3. 昨年6月、平壌市順安(スナン)区域の大陽洞(テヤンドン)で発見された風船に対するPCR検査を行った結果、陽性と判明し、地域を完全封鎖した。
  4. 昨年9月、黄海南道(ファンヘナムド)の青丹(チョンダン)郡を封鎖し、郡内の雲谷里(ウンゴンリ)は完全隔閉措置を行った。

完全隔閉措置を行った青丹郡雲谷里は、韓国から40キロほどしか離れていない。北朝鮮は昨年7月、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向けて飛ばすビラが、コロナを広げていると激しく非難したが、雲谷里での封鎖はこうしたビラの飛来と関連した措置と思われる。

同様の韓国に比較的近い黄海北道(ファンヘブクト)の麟山(リンサン)郡、江原道(カンウォンド)の淮陽(フェヤン)郡でも、住民が韓国から飛来したビラに触れたことで2級封鎖が行われた。

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実際、封鎖の理由としてはコウモリなど野生動物への接触、中国人との接触、ワカメの密売、そして上述のようにビラに触れたという理由が挙げられている。

このワカメの密売というのは、海水からコロナが感染するとの理由で、漁業を禁止する措置に違反したものに該当すると思われる。平安南道(ピョンアンナムド)の文徳(ムンドク)郡では昨年5月、清南(チョンナム)水産事業所で海水に触れる事件があったとして、2級封鎖が行われている。

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封鎖期間は1日から最長で19日に及んだ。その期間を決めるのは非常設国家非常防疫審議委員会で、事案の重さ、検査結果などに基づいて決定したと思われる。

昨年8月10日、金正恩総書記は非常防疫戦の勝利を宣言し、最大非常防疫体系を正常防疫体系へと転換した。しかし、報告書にはその後も封鎖が行われたことが記されている。

昨年8月25日、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市の一部地域に対して完全隔閉の指示が下され、同月20日以降に恵山に出入りした者は、平壌への入市を禁じ、取り締まりが指示されている。

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また、平安北道の亀城(クソン)市、大館(テグァン)郡、東林(トンリム)郡、咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱山でも勝利宣言後に封鎖が行われた。川を挟んで韓国と向かい合う開城(ケソン)市の開豊(ケプン)区域では、今年に入ってから封鎖が行われた。