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北朝鮮は2020年、日本の警察庁にあたる「人民保安省」の名称を「社会安全省」へと変更した。韓国デイリーNKは、これに合わせて同年12月の最高人民会議常任委員会で採択された「朝鮮民主主義人民共和国社会安全取締法解釈」という文書を入手した。

社会安全取締法は安全員が「刑事責任を追及するほどに至らない違法行為を行った機関、企業所、団体や公民」の取り締まり、取り調べなどの過程で適用される法律だ。つまり、日本で言うところの行政罰全般を、安全員が取り締まり、処罰まで下せるとした法律だ。

従来の「人民保安取締法」の適用対象は、「刑事責任を追及するほどには至らない法秩序を破った者」だったが、社会安全取締法は個人以外にも適用範囲が広がっている。また、「わが国に居住又は滞在している他の国の公民」――つまり外国人にも適用範囲を広げた。

(参考記事:【全文】北朝鮮社会安全取締法

また、13条は次のように定め、管轄地域外での活動も行えるようにした。

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第13条(管轄地域外での調査活動)
安全員は、違法行為を明らかにするために管轄地域外で調査活動を行うことができる。必要な場合、当該地域の社会安全機関に違法行為に関する調査を依頼することができる。

従来の人民保安取締法で定めた行政処罰(第57条)の種類は、▲労働教養(労働再教育)▲資格停止▲降級▲資格剥奪▲停止▲没収などだったが、社会安全取締法(第34条)では▲労働教養▲罰金▲弁償▲停止▲没収に変わった。

人民保安取締法では行政処罰の審議を行う機関が「人民保安機関責任者協議会」となっているが、社会安全取締法では「社会安全機関事件協議会」となっている。さらに、1カ月以上の労働教養処罰を下そうとする場合は、当該検察機関と文書上の合意をしなければならないという内容も盛り込まれている。

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このほか、従来の人民保安取締法には取り締まり手続きに調査、身体検査、勾留に関する部分しかなかったが、社会安全取締法には押収(第18条)、鑑定(第19条)、検証と心理実験(第20条)、識別と対質(第21条)を追加し、手続きを細分化した。

注目すべきは、17条の身体検査の部分だ。

第17条(身体検査)
安全員は、摘発された者の身体や衣服から違法行為に関連する物品や文書を見つけなければならない場合、身体検査を行うことができる。
この場合、2人の立会人を立てる。摘発された者が女性である場合には、女性が身体検査を行い、立会人も女性でなければならない。

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女性の被疑者に対しては、女性の安全員が身体検査を行うことで、人権に配慮しようとする措置と見られる。

(参考記事:世界最悪の人権侵害国・北朝鮮が急に「人権教育」を始めた理由

また、◇身体検査は昼間に行うが、必要な場合は夜に行う◇場所の選定に注意せよ◇個別に行なえ◇侮辱的な発言、乱暴な行動を控えよ◇プライベートの漏洩禁止――などが定められている。

さらに38条では、法執行の過程で問題があった場合の、苦情の受け付け、処理方法を定めている。

第38条(違法者処理に対する意見の受付と処理)
違反者の処理に意見がある機関、企業所、団体や公民は、上位の社会安全機関に意見を提出することができる。
意見を提出された社会安全機関は、定められた期限内に処理し、意見を提出した機関、
意見を提出した機関、企業、団体や公民に通知しなければならない。

ただし、実際の現場でそのように行われるかどうかはわからない。北朝鮮の法執行は極めて恣意的に行われ、人権が無視されることが多いからだ。

同法の施行後にも、取り調べの過程における人権侵害が後を絶たないのが現状だ。

(参考記事:「取り調べでボロボロ」女子大生らの姿に北朝鮮国民も衝撃