「僕が山に行かないと飢えちゃうよ」子供が食べ物を求めさまよう北朝鮮の惨状

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北朝鮮北部の慈江道(チャガンド)にある和坪(ファピョン)は、1000メートル級の山に囲まれ面積の91%が山林で占められている。谷底を流れる川沿いに僅かな平地があり、そこで細々とジャガイモや麦の栽培が行われている。

昔から貧困に悩まされてきた地域だが、昨今の食糧難でさらなる苦しみが住民を襲っている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

もともと、この時期は前年の収穫の蓄えがなくなる「ポリッコゲ」(春窮期)に当たり、毎年のように飢えに苦しむが、今年は特にひどく、1日に1食すら口にできない人も少なくない。

生き抜くために子どもたちは、学校に通わず、朝から山に入って山菜採りをして、午後になったら下ってくる。服は薮に引っかかってボロボロで、垢まみれで顔も真っ黒。履く靴がなく裸足の子も少なくない。コチェビ(ストリート・チルドレン)を彷彿とさせるみすぼらしい格好をしているが、家もあり両親もいる子どもたちだ。

親たちは、ともかく食べ物を手に入れるのに必死で、子どもたちの服をきちんと洗濯する余裕すらないのだ。もちろん、靴を買う余裕などあるわけがない。20世帯から40世帯が所属する人民班(町内会)で、1〜2世帯を除いてほとんど皆が同じような状況だから、貧しくてボロをまとっているからとバカにされることすらない。

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子どもたちの採ってくる山菜と、わずかばかりの穀物で山菜粥を作り、糊口をしのいでいるのだ。

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ある住民は現地の状況をこう語った。

「子どもは(穴が空いて)指のはみ出た靴を履いて学校へ行った。以前なら新しい靴が欲しいと駄々をこねるところだが、何も言わないの姿に胸が引き裂かれそうだ。本当は学校に行かず、山に行って山菜を採っているのだ。明日から学校に行きなさいと言ったら、『お母さん、僕が山菜でも採りに行かないと飢えちゃうよ』と言われ、胸が詰まって何も言えなかった」

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別の住民はこう語る。

「コロナ後に子どもに新しい靴を買ってやれずにいる。靴1足が10万北朝鮮ウォン(約1600円)以上するのでとても手が出ず、中古の靴を買ってやったが、子どもは成長が早いのですぐに靴先がほつれる。最近は父親の大きな靴を履いたり、靴下だけ履いて出かけたりする。靴も買ってやれず胸が痛むが、食べ物を補うと言って山菜採りをしているので、さらに胸が痛い。なんとか(生きていく)方法があれば良いのだが」

北朝鮮の学校では1クラス30人が一般的だが、地元の学校では5人から10人しか出席していない。担任教師は家庭訪問しているものの、どの家も生活が苦しいので、とても学校に出てくるように言えず、そのまま踵を返すとのことだ。

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(参考記事:「住民は希望を失った」北朝鮮・高山地帯の深刻な食糧事情

情報筋は、国が食糧問題を解決できないのならば、自分たちで自由に稼げるようにしてほしいと訴えているが、国はむしろ市場への統制を強めている。もっとも、和坪の人口はわずか4万人。商売をしたところで、大した儲けにならないだろう。

こんな深刻な食糧難が、麦の収穫が始まる初夏まで続くのだ。

(参考記事:コントロールしようとした市場に翻弄され続ける「金正恩の米屋」