デイリーNKでは、定期的に北朝鮮国内の物価調査を行っている。北朝鮮の物価と食糧供給の実情を知るに当たって最も重要な指標のひとつがコメ価格だ。例年なら、春には前年の収穫分が減少し、麦の収穫が始まる初夏まで高値が続くが、今年は3月に入ってから下落傾向にある。これは人為的な介入があったことを示している。
中国との国境に接する両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の今月3日のコメ価格は、5800北朝鮮ウォン。先月19日の6000北朝鮮ウォンと比べて3.3下落し、コメが多く出回っていた2月以前の価格に戻った。(いずれも1キロの価格、1000北朝鮮ウォン=約16円)
同じく中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)でも、2週間で2.3%下落した。なお、平壌ではほぼ横ばいとなっている。
これは、北朝鮮当局が今年2月、コメ輸入を拡大せよとの指示を出したことに基づくと思われる。
中国のデイリーNK情報筋によると、北朝鮮は先月から、コメの輸入を大幅に増やし、中国から北朝鮮に向かう国際貨物列車の積荷の9割以上をコメが占めている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面中国駐在の北朝鮮貿易代表部の多くも、上層部から「貨物列車にはコメ以外のものは何も載せるな」との指示を受けたとのことだ。ともかくコメの輸入を優先せよということだ。
また、北朝鮮労働者を雇用している中国企業に対しても、2月からコメや現金を上納せよとのプレッシャーがかけられている。
その理由だが、北朝鮮国内における食糧不足が依然として深刻であるためと思われる。デイリーNKの内部情報筋は、「糧穀販売所は住民に販売する穀物を1カ月に1回も売りに出せない状況」にあり、それでコメでも何でもともかく輸入せよとの指示を下したようだと伝えた。
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「何でもいい」とのことで、輸入されているのが、北朝鮮で一般的なジャポニカ米ではなく、東南アジア産のインディカ米だ。中国産のコメは1キロあたり8元(約153円)から10元(約190円)で取引されているが、インディカ米ならその半分の価格で購入できる。
インディカ米は、糧穀販売所を通じて、北朝鮮産のコメより2割ほど安い価格で販売されたが、輸入原価より高く売っているとの批判の声も上がっている。
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また、今月15日の太陽節(故金日成主席の生誕記念日)を控え、3日から各機関の幹部を中心にして穀物、魚、肉などの特別配給が行われている。さらに、太陽節を迎えて金正恩総書記からの贈り物と称して、食糧の販売が行われる計画がある。