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「万民が平等」を謳う北朝鮮だが、現実はその正反対の徹底した身分制度の存在する社会だ。朝鮮戦争後の1958年から1960年にかけて行われた「中央党集中指導事業」では、全国民の出自と思想が当局により徹底的に調べ上げられた。当局はまた、密告と吊し上げを煽り、パニック状態となった。

反革命分子とされた5500人を政治犯収容所送りに、一部は処刑し、8000家族を僻地に追放した。また、国民を3つの階層(現在は5つと言われる)、51の分類に分けて、優遇または差別する身分制度を完成させていった。

(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

この制度下で、最も成分が悪い(身分が低い)とされる人々には「傀儡(かいらい)軍捕虜」――つまり朝鮮戦争時に捕虜となった韓国軍出身者とその家族が含まれる。韓国では「国軍捕虜」と呼ばれる彼らだが、進学や昇進において徹底的に差別され、監視の対象となっている。

(参考記事:差別と迫害に耐え北朝鮮を生き抜いた韓国軍の元捕虜

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の炭鉱のそばに住んでいた母子も、その一例だ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、この母子は、捕虜として捕まり、咸鏡北道の炭鉱に強制連行され、事故で死亡するまで働かされた男性の孫娘とその息子だ。

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極端なゼロコロナ政策による、餓死者を出すほどの深刻な食糧不足に苦しんだ母子は、家財道具と家を売り払ってなんとか食いつないだが、それすら底をついたため、村を捨てて全国を放浪することになった。

居住と移動の自由が認められていない北朝鮮では、特別な理由がない限り、勝手に引っ越すことは許されていない。それでも、このようにすべてを捨てて山ごもりをしたり、コチェビ(ホームレス)になったりする人が相次いでいる。

(参考記事:「生きるために家を捨て、山の中で狩りをする」北朝鮮の飢餓が深刻

行方をくらました場合、脱北の可能性があるとして政治的事件として扱われたりするが、監視対象となっている傀儡軍捕虜の子孫であればなおさらのことだ。

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国家保衛省(秘密警察)は、この母子が韓国行きを目論んでいるとして、全国に手配令を下し、顔写真入りの手配書を全国の安全部(警察署)と人民班(町内会)に配布した。その結果、母子は陽徳(ヤンドク)駅付近を走行中の列車内で逮捕され、すぐにどこかに連れ去られた。

「危険放浪者が越南逃走(韓国行き)を図り逮捕された」との噂は、陽徳のみならず道内全域に広がった。

母子がいかなる処分を受けたか情報筋は触れていないが、運が良くても管理所(政治犯収容所)送り。それすら許されず、もはや闇に葬り去られたかもしれない。

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(参考記事:山に消えた女囚…北朝鮮「陸の孤島」で起きた鬼畜行為