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身寄りのないお年寄りなど社会的弱者を中心に、餓死者を出すほど深刻なレベルに達しているとされる北朝鮮の食糧難。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降で最もひどいとの説も聞かれるが、解消に向かいつつあるのだろうか。

中国の吉林省とロシアとの国境に面した咸鏡北道(ハムギョンブクト)で、高騰していた物価が下落傾向にあり、一部品目はコロナ前のレベルまで値を戻した。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

道内最大都市で北朝鮮の流通の要衝の一つである清津(チョンジン)や中国に面した会寧(フェリョン)の市場では、食用油、化学調味料、卵などの値段が下落傾向にある。

清津市内の水南(スナム)市場で、食用油1キロはコロナ前、1万1000北朝鮮ウォンだったが、今月18日の時点で1万5500北朝鮮ウォンまで戻した。一昨年2月にはその2倍であったことを考えると、かなり安くなっている。(1000北朝鮮ウォンは約16円)

また、化学調味料450グラムは1万9200北朝鮮ウォンで、コロナ前の1.4倍まで戻した。一方、卵1個は1000北朝鮮ウォン程度で、コロナ前よりむしろ安くなっている。

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会寧の市場では、食用油1キロは1万5000北朝鮮ウォン、化学調味料450グラムは1万8900北朝鮮ウォン、卵1個は870北朝鮮ウォンで売られている。

しかし、値段は下がっても売れ行きは芳しくない。庶民にお金がないからだ。

「(コロナ前のように)個人の密輸が盛んになったら市場にも商品が溢れ、商人も儲けられるが、今は貿易の主導権を国が握っており、個人の密輸が困難になった」(情報筋)

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北朝鮮は、以前のように地方の貿易会社や個人がてんでバラバラに貿易する体制ではなく、国が貿易を司る「国家唯一貿易体制」を打ち立てようとしている。この地域は、中国との密輸で生計を立てていた人が多く、彼らは貿易会社の幹部に会ってビジネスチャンスを見つけようと努力しているものの、どうもうまくいっていないようだ。このままでは、ずっと不況が続いてしまう。

(参考記事:密輸横行で骨抜きになる北朝鮮の「貿易独り占め政策」

手に届く価格まで下がったことで、以前よりは売れ行きはよくなったが、必要最低限の量しか買うことのできない人が多いため、売れ行きが良いとは言えない。

北朝鮮は近年、なし崩し的に進んできた市場経済化にブレーキを掛け、1980年代以前のような社会主義計画経済に回帰し、市場経済にはそれを補完する役割を担わせることを目論見ているようだ。または、朝鮮労働党や朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の息のかかった国営企業に利益を独占させる縁故資本主義的な体制の確立を考えているのかもしれない。

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そもそも国内に外貨がどれほど流通しているか、誰にもわからない状態は正常とは言えず、「最高指導者への忠誠心や思想よりカネ」という風潮は、体制を揺らがしかねないと考えているのだろう。

(参考記事:本腰を入れて市場を潰しにかかる北朝鮮の「計画経済回帰策」