「20代の妊婦」新型コロナで命拾い…北朝鮮送りを免れる

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中国には、数万人から数十万人に達する脱北者が潜伏していると言われている。

正式にビザを取って中国に住む親戚を訪ね、ビザ満了後も滞在し続けて仕事をする人、国境の川を渡り短期間の仕事をして北朝鮮に帰る人、人身売買の犠牲になり望まぬ結婚を強いられた人、韓国や第三国を目指す人など、脱北の動機や目的は様々だ。

中国は、個々の事情に配慮せず、脱北者を一律に「経済目的で入国した不法滞在者」と見なし、摘発し次第、北朝鮮に強制送還している。送還後に自由や生命が脅かされかねない人々の送還を禁止した難民条約の「ノン・ルフールマン原則」に違反する行為で、国際社会に厳しく避難されているが、中国は耳を傾けようとしない。

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しかし、そんな脱北者を取り巻く状況に変化が生じつつある。

北朝鮮は今年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために、国境を封鎖する措置を取った。それに伴い、脱北者の身柄の引き受けを拒否するようになったことで、結果的に強制送還から逃れるようになったのだ。

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中国のデイリーNK情報筋によると、今月初めに吉林省当局が、脱北者200人を強制送還しようとしたが、北朝鮮に拒否された。200人は、図們市公安局と辺防部隊(国境警備隊)の勾留審査所に勾留されているものと思われる。

ちなみに中国遼寧省の丹東市公安局が逮捕した脱北者の中には、20代の妊婦も含まれていた。公安局は強制送還しようとしたが、北朝鮮が拒否。妊婦には、強制送還されれば、保衛部(秘密警察)に強制的に堕胎手術を受けさせられるリスクが迫っていたが、送還が拒否されたために、中国国内の病院で出産できるようになった。

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また、遼寧省でも脱北女性20人が逮捕されたが、北朝鮮は引き受けを拒否し、丹東市公安局と辺防部隊(国境警備隊)の非法越境者(脱北者)集結勾留場で勾留され続けている。

このような状況で期待されているのは、収容施設のキャパシティを超える脱北者が勾留されていることにより、脱北者の取り締まりが緩和されることだ。

情報筋によると、公安当局は今月18日まで北朝鮮からの身柄を引き受けるとの通告がなければ、国境封鎖が当面の間続くと見て、今後の方針を議論する予定だ。

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公安当局はすでに、脱北者なら問答無用で逮捕するのではなく、住所が不定で社会的に問題を引き起こしうると見なした人に限って逮捕する傾向が表れている。

今回、強制送還の直前まで追い込まれた人々は、元々住んでいたところ、つまり人身売買で無理やり結婚させられた中国人男性の家から逃げ出して、各地を転々としたり、食堂や飲み屋で働いていたり、派出所に居所登録をしていない人が多かったというのが情報筋の証言だ。

一方、遼寧省公安局は昨年12月、自国民と同居する脱北女性20人あまりを地域の派出所に登録させる手続きを取ったが、このときに居所登録していた女性のうち、北朝鮮と頻繁に通話していた人や、居住地から逃げたり、犯罪を起こしたりする可能性があるとみなされた人を除いては、取り締まりの対象となっていない。

脱北者を無条件で逮捕して追放するのではなく、問題を起こさずに暮らすのなら、監視下に置いた上で受け入れるという重要な方針転換だ。ただし、北朝鮮による人権侵害を免れても、中国で人身売買、強制結婚という別の人権侵害にさらされている状態に変わりはない。

(参考記事:脱北女性の深刻な精神疾患、中国の調査で明らかに

北朝鮮は、脱北後に自らの意思で帰国しようとした人を、冷酷な仕打ちで迎えている。

今年7月、北朝鮮・両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)で、脱北して中国に暮らしていた女性2人が再密入国しようとして逮捕される事件が起きたが、うち1人は中国で新型コロナウイルスの陽性判定を受けていたことが判明した。女性の処遇については明らかになっていないが、銃殺される可能性が高いと見られている。

(参考記事:「死ぬなら故郷で」…北朝鮮「中国で陽性判定」の女性を銃殺か