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北朝鮮では、土地も住宅もすべて国が所有することになっているのだが、それらの使用許可証を売買する形で、不動産市場が形成されている。

当局は、このような実情を逆に利用して、完成後に実質的な「分譲権」を与えることを見返りに、トンジュ(金主、ニューリッチ)から住宅建設への投資を募る手法を用いてきた。これなら予算が不足していても住宅建設を行うことが出来、上層部に実績として示すことができる。一方で、トンジュは受け取った住宅を転売して多額の利益を手にするというウィンウィンのビジネスモデルだった。

しかし、当局は最近、不動産を売買するブローカーの取り締まりに乗り出している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

首都・平壌の情報筋は、当局が不動産ブローカーの取り締まりの強化に乗り出したと伝えた。

それも、ブローカーが多く集まることで有名な、チュチェ(主体)思想塔のそばにあるレストラン、船橋閣(ソンギョガク)近隣の空き地に車を乗り付け、その場にいた者を全員連行するという荒っぽいやり方でだ。大量連行の後も、再びブローカーが集まらないように、安全員(警察官)が10日以上にわたって警戒に当たっている。

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船橋閣周辺の路上での不動産取り引きは、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから見られるようになった。住んでいる家を売り払い、より安い家を購入して引っ越し、その差額を食糧の調達に使おうという人が情報交換をする場となっていたのだ。今では平壌で一番の不動産取り引きの場所となっており、そこに集うブローカーは売主と買主を結びつけ、売買金額の5%から7%を手数料として受け取る。

今の時期に不動産取り引きが盛んなのは、春と秋が引っ越しシーズンだからでもあるが、理由はもうひとつある。

平壌では今月16日、和盛(ファソン)地区の1万世帯分の住宅の竣工式が行われた。これらの金正恩総書記の肝いりで開発された新築住宅の売買にブローカーが介入する余地はないが、入居者が元々住んでいた物件が多数、空き家となるため、それらを取引して儲けようというものだ。

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一方で、和盛地区の住宅を取り扱うブローカーも一部だが存在する。権力機関とどれほど強力なコネを持っているかで、扱える物件が違ってくるようだ。

(参考記事:金正恩「自慢のタワマン」をさっさと売り飛ばす平壌市民

なお法律では、必要のなくなった家は国に返すことになっているが、それに従っても何の代償も得られず、損をするだけだ。そこで、ブローカーを通じて売りに出すのだが、平壌市人民委員会(市役所)の都市経営部と安全部をバックにつけたブローカーでなければ、安全に取り引きができなくなっているようだ。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、今月に入ってから清津(チョンジン)市内で不動産の取り引きに対する取り締まりが強化されていると伝えた。

同市では、浦港(ポハン)区域の南郷洞(ナミャンドン)のマンションの売買を仲介しようとしていた女性ブローカーが今月初めに逮捕された。しかし、安全部に強力なコネがあるため、数日で釈放された。

ゼロコロナ政策により生活が苦しくなり、市内中心部のマンションを売り払い、郊外の平屋に引っ越そうとする人が増えているが、このような場合にもブローカーが仲介する。摘発されれば家も住宅の代金もすべて没収されるため、売主は強力なコネを持ったブローカーに頼らざるを得なくなる。

取り締まりは常日頃から行われているものの、上述のように大物のブローカーも逮捕されるほど強化されているため、注意深く行わざるを得ない。

不動産の売買を禁じる命令は過去にも出されている。貧しい人が家を売り払ってホームレス状態になってしまうことを防ぐという貧困対策の側面もあるが、一般庶民がまとまった現金を手に入れるには、家を売る以外に方法がない。より安い家に引っ越して、その差額で食糧を確保しようとする庶民の生活が苦しくなるだけだ。

また、すでに形成されている不動産市場を完全に「なかったこと」にするのは、非常に困難なことだ。幹部やトンジュが、庶民からすると天文学的な額の数万ドルの外貨を支払って購入した購入マンションも、法律を厳格に適用すれば没収の対象になる。それに対する不満を抑えつけるのは、無理な話なのだ。

(参考記事:北朝鮮、不動産取引を禁止…違反なら懲役刑も