北朝鮮国民が「大量餓死」を想起する”インディカ米騒動”

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1994年、前年の記録的な冷夏によりコメが大凶作となった日本は、タイから大量のコメを輸入した。しかし当時の日本人は、東南アジアなどで生産される長粒種(インディカ米)に慣れておらず、市場は混乱に陥った。いわゆるタイ米騒動だ。

ちょうど同じ頃、北朝鮮も長粒種のコメを海外から輸入していた。長年の全国段々畑化で山林が荒廃し、保水力を失い大雨のたびに土砂が流出。非効率的な集団農業と非科学的なチュチェ(主体)農法により、国内生産分だけでは需要が満たせなくなったからだ。

それは、その後の大飢饉「苦難の行軍」へと繋がっていく。

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米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は昨年12月、北朝鮮が17隻の貨物船を使い大量の穀物を輸入したと報じた。その前の8月には、駐インド北朝鮮大使館が、インドから1万トンのコメの輸入を進め、民間経済団体に支援を求めたと報じている。また、中国からも9449トンのコメを輸入したとも報じている。このいずれも長粒種だ。

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このコメと思われるものの販売が始まったと、黄海北道(ファンヘブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

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先月22日の旧正月に合わせて、沙里院(サリウォン)市内の糧穀販売所では、市場のコメ価格の半分の値段で、白米8割に雑穀を2割混ぜたものを販売した。ちなみに、沙里院に近い首都・平壌の市場で、コメ1キロは5480北朝鮮ウォン(約88円)で売られている。

この白米に、インドまたは中国から輸入されたものと思われる長粒種のコメが混じっていたのだが、消費者の反応は芳しくない。

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「安南米(長粒種のコメ)は風が吹けば飛んでいく(ほど軽く)、炊きたてなら食べられなくはないが、冷めるとパサパサして砂を噛んでいるようだ。お茶漬けにしても雑穀を混ぜてもうまく混ざらない。粥にするなら、うるち米やトウモロコシの粉がまだマシだ」(情報筋)

タイ、ベトナム、インド産の長粒種のコメは、質の良いものなら、しっとりしつつもパラパラで、スープに入れたりお茶漬けにしたりするには向いていると言われているが、質の悪いものは匂いがキツくパサパサだ。日本の消費者の間で「タイ米は不味い」というネガティブなイメージがついてしまったのは、上述のタイ米騒動の時に輸入したコメが質の悪いものだったからだと言われている。

一方、北朝鮮の人にとっても、長粒種のコメはトラウマとなっている。

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「苦難の行軍の頃に、初めて口にしたのが安南米だった」(情報筋)

金正恩総書記は、農業に今まで以上に力を入れる方針を示していたが、結果は散々なものだ。昨年もかなりの凶作となってしまい、食糧難が深刻化。食べ物が底をついた絶糧世帯が続出し、餓死する人まで出た。

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そんな中で、苦難の行軍を思い起こさせる長粒種のコメが入ってきたことで、「なぜ苦難の行軍のときに食べたコメをまた食べさせるのか」と怒る人もいれば、苦しかった当時の辛い記憶を想起させられる人もいるとのことだ。

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タイ米騒動のころ、日本では、日本米と抱合せで販売されたタイ米だけを捨てる消費者が現れたが、北朝鮮の消費者は、長粒種のコメを選り分けて市場で売りに出し、代わりにうるち米を購入しているとのことだ。

別の地域では、長粒種のコメが一般庶民のみならず、幹部にも配給された。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、旧正月に幹部や司法機関の職員、軍人に対して長粒種のコメ7キロから10キロが配給されたと伝えた。また、絶糧世帯、中でも老人のいる家にも3キロが配給された。一方、生活は苦しくとも、絶糧世帯に陥っていない人々への配給は行われなかった。

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コメを受け取った絶糧世帯は、質を問うほどの余裕がないために、皆一様に喜んでいるという。大喜びで食べる人もいれば、うるち米に混ぜて炊いている人もいる。一方で余裕のある幹部らは、まだトウモロコシの方がはるかにマシだと、市場で売り払いうるち米を買っているとのことだ。