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世界には、国勢調査を行わなかったり、行っても結果を秘密にしたりする国がある。

例えば中東のレバノンは1932年以降、国勢調査を行っていない。キリスト教とイスラム教の人口が拮抗しているため、大統領、国会の副議長、副首相はキリスト教徒、首相と国会議長はイスラム教徒が就任することになっているが、国勢調査で宗教間のバランスが崩れていることがわかれば、内戦に繋がりかねないからだ。一方で、ガバナンスや財政が脆弱で、国勢調査を行えない国も数多く存在する。

一方で、北朝鮮はどうだろう。国連人口基金の支援を受けて2008年に国勢調査を行い、2017年にも行っているが、後者の結果は明らかにされていない。実際の人口が公式発表より少なく、国力の衰退を諸外国に悟られるのを嫌ってのことだと言われている。

だが、少子化は社会の様々な現象として表面化している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:謎に包まれている北朝鮮の「本当の総人口」

平安南道(ピョンアンナムド)の教育機関に勤める情報筋は、平城(ピョンソン)市内の徳性(トクソン)小学校で今月1日、新入生を歓迎する集まりが開かれたが、参加者が予想より少なかったと伝えた。

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また北朝鮮の学校では30人学級が普通だが、10年前には1学年に4〜5クラスあったのに、今年の1年生は3クラスしかないとも伝えている。今年の新入生は2016年度生まれだ。2000年代後半から2010年代後半にかけて急速に少子化が進んだことがうかがえる。

背景として様々な要因が指摘されているが、ひとつが市場経済化の進展だ。平城は、大消費地の首都・平壌に隣接し、全国からモノが集まる流通の要衝だ。市場の商人のほとんどは女性で、福祉システムが崩壊した現在の北朝鮮では、育児と商売を両立させるのは非常に厳しい。

「平城のように都市の規模が大きいところほど、若い女性たちは大きく商売をするので、子どもは産んでも1人だ。子どもを多く産めば、市場での競争に負けてしまい、食べていけなくなる」(情報筋)

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また、少子化対策として離婚が困難になっていることも合わさって、少子化、晩婚化、非婚化が進んでいると言われている。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、貿易都市の新義州(シニジュ)で少子化が進んでいると述べた。既婚女性は子どもを産んでも1人で、出産を諦める女性も多い。

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「子どもを産んで育児期間だけでも国が食糧配給をしなければならないのに、当局は女性に多出産だけを求め、食糧配給を行わない。だから家族の生計に責任を持つ女性たちは、出産を諦めて商売に専念するしかない」(情報筋)

この情報筋は、新入生の甥を関門(クァンムン)小学校の入学式に連れて行ったが、子どもの少なさに驚いたという。自分の娘が小学校に上がったころには、1学年80人はいた児童が今では60人ほどになっているといいう。

育児インフラの整備と経済的安定という、ごく当たり前のことに政府が手を付けなければ、少子化解消は難しいだろう。

(参考記事:金正恩の異次元過ぎる「子作り対策」にのけぞる女性たち