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北朝鮮の理系大学の最高峰、金策(キムチェク)工業大学。ここには「遠隔教育大学」というコースがある。登校しなくてもリモートで講義を受けられるというもので、2010年に開始され、現在では1700カ所で受講できる。

北朝鮮は2020年4月の最高人民会議第14期第3回会議で遠隔教育法を制定し、人材養成に本腰を入れてきた。

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通常の大学とは異なり、入学試験もリモートで行われるのだが、江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)の試験会場では、再試験が行われることになった。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

遠隔教育大学の入試は、先月末から今月初めにかけて江原道図書館で行われた。入学を希望する者は、イントラネット(北朝鮮国内にしかつながらないインターネット)が設置された図書館でリモート試験を受けることになっているが、あろうことか、停電が頻発している。

これを受けて内閣教育委員会は、試験を無効にして1週間後に再試験を行えとの指示を下した。また、江原道教育部に厳重警告を下し、朝鮮労働党江原道委員会にも通告し、事件化したという。

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江原道教育部は、遠隔教育大学の入試会場である図書館と各企業所の科学技術普及室には、電源を保証するための装置を備えよとの指示を出したが、これがまともに守られていなかった。すでに設置してあるところでも点検を怠り、試験中に停電が起きたことが判明。結局、教育部と送配電所の機関長が批判書を書かさせれる処罰を受けた。

それから1週間後、発電機と電圧調整器を大急ぎで調達して再試験が行われたが、こちらは問題なく終了した。再試験が行われたのは全国的に江原道だけで、金策工業大学の遠隔教育大学ができてから初めてのことだったという。

大学入試が実施される2月末から3月初めにかけては、北朝鮮で最も電力事情が逼迫する時期だ。水力発電への偏重が激しい北朝鮮の電力供給だが、雪が溶ける前のこの時期は、ダムに水が少なく、需要を満たすほどの発電ができない。

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無理やり発電所を稼働させて、大きな事故に繋がったケースもある。

(参考記事:老朽化した発電設備が爆発…人災を招く北朝鮮の「満稼働・満負荷」

入試でこの有様なのだから、通常のリモート授業は停電のせいで受講できないことが多いものと思われる。遠隔教育大学という発想はとても良いのだが、それを支えるだけの電力インフラがなければ、宝の持ち腐れだ。