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韓国で2015年に成立、翌年施行された不正請託及び金品等の収受禁止に関する法律、通称キム・ヨンナン法。公務員、メディア関係者らが1回3万ウォン(約3150円)を超える接待を受けることなどを禁じた法律だ。

公務員はともかく、対象に教師が含まれているのは、かつて「寸志」と称して毎年10月5日の「教師の日」に、教師に対して児童・生徒の親が金品を送ることが当たり前のように行われていたためだ。また、メディア関係者については、取材内容を対象者に突きつけ、恐喝する行為がしばしば見られたからだ。

もちろんそれ以前から、世間の態度は徐々に厳しくなっていた。1990年代前半までは広範に行われていた交通違反のワイロによるもみ消しも、1990年代後半からは収賄罪で摘発されようになった。国の汚職の状況を示す腐敗認識指数も、改善が続いている。

一方の北朝鮮だが、調査対象となった2012年以降に改善は見られるものの、180カ国中174位で最下位レベルだ。許認可、人事、違法行為の取り締まりなどありとあらゆる権限が、ワイロを搾り取るのに使われるほど、腐敗が蔓延している。そうした状況に対して当局は、規制に乗り出した。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

当局は22日の旧正月を迎え、上下関係において1万北朝鮮ウォン(約160円)を超える贈り物を授受する行為は絶対に容認できないとして、摘発時には刑事罰と行政罰に加え、朝鮮労働党からの処分も下す方針を示した。

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当局は、上司と部下、教師と児童・生徒とその親などの上下関係は、朝鮮労働党の政策を執行・貫徹するための関係であらねばならず、個人的に事実上のワイロに当たる贈り物を渡す行為は、社会主義の一心団結を阻害する行為だと指摘した。

そして、「今はすべての党員と勤労者が普段以上に心と志をひとつにして、社会主義一心団結の旗を掲げてひとつにかたまり、わが国(北朝鮮)第一主義精神を発揮し、一連の難関を打開すべき時期だ。チュチェ(主体)的に観点に立ってワイロ行為を克服しよう」と訴えた。

さらに、ワイロの授受のみならず、それを見かけた場合はすべて反社会主義行為(社会主義にそぐわない風紀の乱れ、違法行為)として、積極的に通報する空気が醸成さればならないとも強調した。

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朝鮮労働党両江道委員会は、今回下された方針を幹部に徹底的に周知し「検察に身柄を引き渡されるようなことになりたくなければ気をつけろ」と警告した。また、幹部も一般住民も経済的苦境に立っているが、このような時こそワイロに揺るがされることなく、一心同体となって心と志をひとつにして元帥様(金正恩総書記)のことだけ、国の発展のことだけを考えて努力しようと訴えた。

北朝鮮では、旧正月などに上役に酒、タバコなどを贈るのは当たり前になっている。人事権を握った上役の覚えをめでたくしておくことが、自分のポストを守り、出世につながるからだ。それはどんどん上に吸い上げられ、最終的には平壌の高位幹部の懐に入る。

(参考記事:一人息子のために軍幹部に巨額のワイロを送る北朝鮮の親心

一方で、そもそも給料が非現実的に低すぎるため、ワイロを受け取らなければ生活が成り立たないという事情もある。

(参考記事:ワイロが途絶え生活苦に追い込まれた北朝鮮の幹部たち

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さて、今回の方針だが、非現実的で実効性のないものと言わざるを得ない。1万北朝鮮ウォンは、コメ2キロも買えない額だ。数十ドルから数千ドル単位の従来の額とはあまりにもかけ離れている。短期的には効果はあっても、ほとぼりが冷めれば元の木阿弥となるだろう。