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コロナ禍の北朝鮮から伝わってくる深刻な食糧難の情報――ある地域からは半分、また別の地域からは8割が絶糧世帯(食べ物が底をついた世帯)になったとの情報が伝わってくるものの、地域差があると思われ、その全容を掴むのは容易でない。

(参考記事:「カエルも食べない水草」で飢えをしのぐ北朝鮮の農民たち

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、幹部の間でも食糧難が広がっていると報じている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)市の幹部はRFAに対し、「かつてなら、幹部の地位にあれば権限を振りかざして私腹を肥やすこともできたが、今ではワイロを受け取ることも、要求することも難しくなった」と述べている。

この幹部が例に挙げたのは、咸鏡南道の某行政機関の局長の生活に関する話だ。昨年から、家にあったテレビや冷蔵庫など、金目のものを次々に売り払いながら暮らしているという。この機関の局長ポストは、ワイロを受け取るチャンスがあまりないためだという。

北朝鮮では幹部といえども、月給は極めて低く、それだけでは生活できない。そのため様々な許認可権、朝鮮労働党の入党推薦、幹部事業(人事)など、様々な権限を利用してワイロを手にし、それなりの生活をしてきた。

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また、かつてはある程度の配給もあり、傘下の工場や企業所に出張に行くと、現金化できるタバコをもらえるなど、様々なメリットがあった。

ところが、最近は道人民委員会(道庁)でさえ倉庫が空っぽの状態で、幹部に配給を行える状態ではない。食糧行政に携わる糧政部にでも勤務していない限り、妻が商売をしてようやく生活がなりたつ程度だという。

国は、生活苦に対する対策を立てるどころか、思想教育を連発して締め付けを強化するばかりだ。だからといって、何もやらなければ、上からも下からも責められる。

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(参考記事:「それで飯が食えるのか」金正恩の”思想教育”に北朝鮮国民が反発

咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)市の情報筋は、国境封鎖と貿易停止に加え、相次ぐ自然災害で、一般庶民も幹部も生活苦に苛まれていると伝えた。

情報筋の住むマンションには、夫が会寧市人民委員会(市役所)に務める家が2世帯あるが、両方とも生活が苦しいという。5月には一方の家で夫が高熱により亡くなり、遺された妻は、野菜を売って苦しい生活をしているとのことだ。

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中国との国境に接した会寧は、市民の多くが密輸に関わり、他の地方に比べれば豊かな生活をしていた。しかし、コロナ対策の国境封鎖で密輸が厳しく取り締まられるようになり、公式の貿易もストップしてしまったため、にっちもさっちも行かない状況となっている。

(参考記事:「人民の生活問題を解決せよ」党の指示に打つ手がない北朝鮮地方幹部