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北朝鮮の恵山(ヘサン)農林大学は、故金日成主席の教示に基づいて1959年に設立された。林業とともに、高山地帯における農業技術の研究を専門とする。平均海抜が1338メートルに達し、農業に向いていないとされていた両江道(リャンガンド)でも育つ作物の品種を開発し、賞や称号を授与されている。

そんな大学で今行われているのは、くず鉄集めだ。現地のデイリーNK内部情報筋が報じた。

大学は昨年末から冬休みに入ったが、1人あたり30キロのくず鉄を集めよとの指示が大学当局から出された。古紙、ハギレ、動物の革などを集めて供出することは「社会的課題」とされ、数十年前から続けられてきたが、地元出身の学生なら、コネを頼ってくず鉄をかき集めることができた。問題は、学生のほとんどを占める他地方の出身者だ。

恵山にコネがないため、地元に戻ってくず鉄を集めなければならないが、北朝鮮ではこの大学のみならず、各種の学校や企業、行政機関で同様のキャンペーンが繰り返されているため、くず鉄の奪い合いになる。なんとか集められたとしても、30キロものくず鉄を恵山まで運ぶのに、高額の運送費と様々な手間がかかる。

「何十里(朝鮮で1里は約400メートル)も離れた地域からどうやってくず鉄を持ってこいというのか」(ある学生)

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また学生の中には、冬休みに帰省もできず、機関や企業所を巡る社会政治活動として、仕事をしたり、講演を行ったりする役目を課せられた者もいるが、だからといってくず鉄のノルマは免除されない。

残された手は、市場でくず鉄を買うことだ。北朝鮮ではこの手のリサイクルキャンペーンが年がら年中行われていることから、くず鉄やハギレはもちろん、人糞に至るまで市場で販売されているのだ。余った資源を無駄なくリサイクルすることが本来の目的なのに、出せなければ批判や処罰の対象になることから、リサイクルで供出するものを購入するという奇妙な状況になっている。

(参考記事:冬の北朝鮮で暗躍する「人糞ブローカー」登場

だが、極端なゼロコロナ政策で国境を封鎖、鎖国状態に入り極度の経済難となっている中では、くず鉄を市場で買うことも容易でない。その場合は、代わりに現金を納めることになっているが、その調達も難しい。

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リサイクルとは名ばかりで、大学当局の本音は現金収入が欲しいというものだろう。この手の現金を徴収する「税金外の負担」は、金正恩総書記自らが禁止を命じた行為だが、ほぼ守られていない。

(参考記事:「金正恩命令」が易々と無視される北朝鮮の本当の現実

さらに、教授の中には、帰省する学生に地元の特産物やタバコを要求する者もいる。下手に断れば成績に響きかねないため、聞き入れざるを得ないのだ。

(参考記事:入学から卒業まで「ワイロまみれ」の北朝鮮の大学