新年を迎えた北朝鮮で始まった「堆肥戦闘」。人糞を使って、化学肥料の代わりとなる堆肥を生産するキャンペーンだが、一部地域では昨年末から前倒しで始まっていた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
鉱山都市として知られる咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)の情報筋は、例年なら年が明けてから始まる堆肥戦闘が、昨年12月初旬から始まったと伝えた。
農民たちは、脱穀場に放置されている藁を背負子に載せて田んぼに運び、水で薄めた人間の尿、各作業班で飼育している牛の尿と豚の糞をたらいに入れて運んで、藁にかけて発酵させる。本来なら収穫と脱穀が終わり、堆肥戦闘が始まるまでの期間は1年で唯一のんびり過ごせる時間だが、早々と堆肥戦闘を強いられた農民は怨嗟の声を上げている。
ただ、同じ茂山でも全域で堆肥戦闘が始まったわけではなく、町の中心では今月2日から始まったと、情報筋は伝えている。1世帯ごとのノルマは200キロ。人糞と石炭の灰を半々の割合で混ぜて良質の堆肥を生産せよというのが当局の指示だ。それができなければ、本人のみならず人民班長(町内会長)に対する総和事業(追及)を行うと当局は警告している。
総和にかけられることを恐れた人民班長は、各世帯を回ってしつこくノルマを達成するようプレッシャーをかけているが、それに怒った一部の住民は「腹が減っているのに、堆肥を作る力などない」と言い返したりしているとのことだ。
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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、定州(チョンジュ)市内では元日から堆肥戦闘が始まったと伝えた。市民は、市場に出る暇もなく、1週間の間、人糞との闘いを繰り広げるが、ただでさえ充分な食事を摂れていないのに、その分収入が減ってしまうことに、「堆肥戦闘という言葉を聞くだけで頭に来る」と不満を口にしている。
人民班長は、商売で堆肥戦闘に参加できない人に対しては、200キロに10万北朝鮮ウォン(約1600円)を支払わせる。しかし不景気が続く中、1週間でそんな高額のカネを払える人は多くなく、「今どき10万北朝鮮ウォンをどうやって払うのか」と、人民班長に抗議する人もいるとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面同市の別の情報筋は、年末までに500キロ、年始に500キロの合計1キロの堆肥を生産するよう指示が出されたとして、「1キロの食糧も配給してくれないのに、1トンもの堆肥をどうやって作るのか」と強い不満の声を上げている。