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「わが国の文化語は、消滅への危険な岐路に立っている」

文化語とは北朝鮮の標準語を指す。かつては韓国標準語とはかけ離れた言葉を使っていた中国朝鮮族が、1992年の中韓国交正常化以降の交流増大により、言葉がすっかり韓国化したように、北朝鮮でも同様の現象が起きているのだ。

普段の取り締まりと思想教育に加え、今月17日から開催される最高人民会議(国会に相当)第14期第8回会議では、「平壌文化語保護法」が討議されるなど、北朝鮮は自国の言葉の韓国語化の阻止に必死だ。そんな中、当局はいつもの「見せしめ」という手法を使っている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:「わが国の言葉は消滅の危機に」文化の浸食に悩む北朝鮮

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、当局が大学生など若者の間での「傀儡の言葉遣い」(韓国的言葉遣い)を使う現象は北朝鮮を内部から瓦解させる反革命犯罪行為だとして、昨年末から取り締まりと思想教育の強化を指示したと伝えた。

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そんな中、清津(チョンジン)農業大学の学生たちが、携帯電話で韓国式の言葉遣いで通話して摘発される「事件」が発生した。摘発された4人のうち1人が、駅の待合室で携帯電話で「チャギヤ」という韓国で使われている恋人を呼ぶ時の言葉を使って通話し、残りの3人はそれに同調したという。

朝鮮労働党咸鏡北道委員会に問題が提起され、中央にまで報告される事態となった。これを受けて、清津市内のすべての大学生を対象に、韓国式の言葉遣いの使用に関する実態調査が行われている。

中央は「傀儡の言葉遣いを使うのは、敵どものブルジョア思想と文化浸透策動に同調する許されざる行為」だとして、以前なら「二度と使わない」との反省文提出と自己批判程度で済ませていたのを、4人を退学処分とした。さらに、道内で最も労働環境が劣悪なことで知られる穏城(オンソン)炭鉱送りにしてしまった。

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当局は「きつい・汚い・危険」の3K労働の職場である鉱山や農村に、都市部の若者自らが「嘆願」して向かうという形で実際は半強制的に送り込む「嘆願事業」を行っている。しかし、一生そこに縛り付けられることを嫌う若者らがワイロで「嘆願逃れ」をしたり、逃げ出したりすることが相次いでいる。

韓国式の言葉遣いをしたとの理由だけで炭鉱送りにされた今回の一件は、清津市内の学生を震え上がらせたという点で効果はあったものの、「炭鉱は恐ろしいところ」という従来のイメージを再強化してしまい、嘆願事業にさらなる影響が出かねないだろう。

(参考記事:貧しい人たちばかり送り出される北朝鮮の「嘆願事業」

両江道(リャンガンド)の情報筋は、今回の事件と関連して、社会主義愛国青年同盟(青年同盟)が学生を教育・統制しきれていないとして、咸鏡北道と清津市の青年同盟に対する検閲(監査)が行われ、若者に対する教養事業(思想教育)を徹底的に行うよう指示が下されたと伝えた。

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教養事業を無責任に行ったとして、青年同盟の幹部に対してその程度に応じて革命化、つまり農村や炭鉱への下放の処分を下すとしており、幹部の間では緊張が走っている。

同時に幹部たちは、いくら教育を行っても若者の言葉遣いを変えるほどの力はないのに、問題が起きれば自分たちの責任にされると不満をこぼしている。

いくら教育をしたところで、若者たちは面従腹背。かっこいい韓国式の言葉を捨てて、古臭い北朝鮮の言葉を使うわけがない。もはや「韓国化」の流れは止められないのだ。

(参考記事:「それで飯が食えるのか」金正恩の”思想教育”に北朝鮮国民が反発