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北朝鮮北部にある三池淵(サムジヨン)は、「聖地の中の聖地」だ。民族の霊山である白頭山があり、抗日パルチザン活動を行っていた金日成主席の本拠地で、金正日総書記の生家とされている「白頭山密営」もある。

極寒の中で雪道を歩いて聖地を巡礼する「踏査」(タプサ)と呼ばれるツアーが盛んに行われている。そんな人々を目当てに、タバコ、酒、キャンディなどの食品を売る人々が出現し、当局が取り締まりに乗り出した。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:月給12年分の費用がかかる北朝鮮の「聖地巡礼」ツアー

その舞台となっているのは白頭山の山麓、金正恩総書記が旗振り役となって、大々的な再開発工事を行った三池淵の市内だ。新築の住宅が立ち並ぶが、北朝鮮の目指すゼロコロナのあおりを受けて、市民は食糧不足とモノ不足に苦しんでいる。

(参考記事:「金正恩の聖地」で母子死亡か…苦し紛れにアヘン使用

個人宅や踏査のルート沿いで店を開いたり、リュックを背負って隊列に付いて行って物を売ったりする市民が現れた。このような現象は三池淵のみならず、全国的に見られるもので、当局は取り締まりを行っている。

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本来、北朝鮮で商売をするには、決められた市場で市場管理所に市場管理税(ショバ代)を払わなければならない。これは、地元当局の貴重な税収となっている。そのため市場外で商売することは「脱税」に当たり、非社会主義現象(社会主義にそぐわない行為)と見なされ取り締まりの対象となっている。

また、先月には朝鮮労働党の幹部を養成する両江道党学校の生徒からなる隊列に、商人が酒を売り、生徒が酒盛りを始め、ぶっ倒れるという事件も発生した。

それに対して朝鮮労働党三池淵市委員会(市党)は、こんな警告を発した。

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「国家商業奉仕許可証もなくタバコ、酒、キャンディなどの個人加工食品を販売する者がいる。リュックを背負って隠れたり、奥地までついていったりして、商売を行うのは、国家秩序を破綻に追い込む行為だ」
「白頭山に登り、精神修養と革命的な良識を積む踏査の隊伍に冷や水を浴びせる商売は即刻中止すべきだ」

(参考記事:「女性イナゴ商人」踏みにじる金正恩体制に北朝鮮国民が反発

市党は、踏査の隊列について回って物を売っていた人の名前を公表。市の安全部(警察署)は、除隊軍人(兵役を終えた人)の中でも体格がよく思想的に問題のない人員を選抜。取り締まり班に加え、市内各地や踏査ルート沿いに配置し、今月13日から集中取り締まりを始めた。

党学校の生徒に酒を売った女性3人は逮捕され、労働鍛錬刑(短期の懲役刑)の処分を受けた。

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人の集まるところで商売するのはごく当たり前のことだが、聖地の中の聖地だけあって、場所が悪すぎたようだ。もっとも、市党は「聖地で商売とは何事か!」と言いつつも、税収が減るのは困るというのが本音かもしれないが。

(参考記事:北朝鮮「人糞集め」の現場は「ランチ出前」ビジネスの最前線