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北朝鮮には「踏査」(タプサ)と言われる行事がある。金日成主席がかつて抗日パルチザン活動を行ったという革命戦跡地を歩いてめぐる、一種の「聖地巡礼」だ。大規模なものは、国営メディアでも報じられる。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は4日の1面で、全国の青年学生が3日、パルチザン活動の本拠地で、金正日総書記の生家とされている白頭山密営などを訪れたと報じている。先月中旬には、エリート養成機関である朝鮮労働党中央幹部学校、内閣、平壌市の党組織、学校、企業所なども踏査に参加したと報じている。

しかし、実際に参加させられる若者は行きたがらないのだという。その実情を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、全国的に1500人の若者が集められ、両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)を出発、白頭山密営までを徒歩でたどる白頭山地区革命戦跡踏査行軍が先月から行われていると伝えた。

平安南道からは300人の若者が参加し、同様の行事は年明けの1月、2月にも行われるとのことだ。これは、「党の後備隊である若者たちに、聖なる山である白頭山の踏査を体験させることで、革命伝統の教養(教育)を強化せよ」との当局の指示に基づくものだ。

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だが、当の若者は行きたがっていない。第一の理由は白頭山の寒さだ。海抜は朝鮮半島で最も高い2744メートル。密営は1793メートルの位置にあり、暖かい日でも最低気温は氷点下20度、寒い日なら氷点下40度まで下がる。そんな中で、1日数十キロに及ぶ雪道を歩くことを10日間も強いられる。

(参考記事:政治行事への参加を嫌がる今どきの北朝鮮の人々

寒さに耐えうる分厚いコート、ロシア帽などで参加することになるが、指定された服と食費、宿泊費を合わせて1人50ドル(約6800円)もの費用を負担させられる。一般的な労働者の月給3000北朝鮮ウォン(約51円)の約12年分だ。

かくして、踏査に参加できるのは、商売で儲けて経済的に余裕のある人などに限られるが、苦労して儲けたカネで、苦労を買うのは嫌だと様々な言い訳をして、参加を避けようとするのだという。

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そもそも、貧乏な若者は最初から選ばれず、積極的に参加しようとする若者は入党希望者、青年組織の幹部を目指す者たちだ。踏査が金儲けのために行われていることがうかがえる。つまり、行きたい若者からは高額の参加費を徴収し、行きたがらない若者からは、免除する代わりにワイロを徴収するということだ。

(参考記事:地元民を苦しめる北朝鮮「赤い観光」ビジネスの本末転倒

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、道内から200人の若者が踏査に向かい、引き続き第2次踏査隊参加者の選抜を行っていると伝えた。道の社会主義愛国青年同盟は、500人を選抜することを、市や郡の組織に命じたが、積極的に行こうとする若者がいないため、経済的に余裕のある家の若者にむりやり押し付けようとしている。