毎年、北朝鮮で新年早々から繰り広げられている「堆肥戦闘」は、不足する肥料を補うために人糞を集めて堆肥を作るというものだ。「臭い、汚い、気持ち悪い」の北朝鮮版3Kである。

韓国では、寄生虫撲滅政策の一環として1967年に人糞を使った堆肥の使用が違法化され、1970年代までに概ね姿を消した。かつて9割に達していた寄生虫感染率だが、1990年代までにはほぼゼロに近い状態となった。一方で、堆肥を大量に使用している北朝鮮では、寄生虫感染が依然として深刻な問題だ。

都市近郊の「堆肥戦闘」の現場には、多くの市民が動員されているが、彼らを目当てにした「ランチ戦闘」が新たなビジネスとなっている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、堆肥戦闘に動員された人々は家から弁当を持参するのが普通だった。しかし、そこには大きな問題があった。

「家から持っていった弁当は、お昼ごろには凍ってしまうので温めなければならないが、これが非常に面倒だ」(情報筋)

これを解決したのが「出前」だ。

市内の食堂は、動員された人々から注文を取り、昼食の時間に合わせて現場まで配達する。人気のメニューはチャジャンミョン(炸醤麺、ジャージャー麺)、テンシン(天ぷら)、ワンジャバプ(いなり寿司)などだ。

「チャジャンミョンはタレと麺を別々の容器に入れてある。現場で火をおこして鍋にかけて食べると、凍えていた体があたたまる。タレには豚肉が入っているのでみんな大好きだ」(情報筋)

チャジャンミョン1杯は、コメ1キロ分に相当する5000北朝鮮ウォン(約65円)。動員をサボった人から払われた上納金を、チャジャンミョン代に当てることもあるという。

市内の食堂にとって、この時期は書き入れ時だ。国の機関、工場、企業所に勤める人たちのみならず、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)や人民班(町内会)の人たちも動員で押しかけてくるので、彼らをターゲットにして食事を出前するのだ。

各食堂は注文が殺到することを見越して、あらかじめ材料を確保しておく。現場では、より多くの注文を取り付けようと、各食堂間での熾烈な「ランチ戦闘」が繰り広げられる。「おまけ」で増量してくれる食堂が人気とのことだ。

「作業が午前中に終わるとしても、家にたどり着けば午後2〜3時になるので、ほとんどの人はさらに働いてノルマを達成しようとする。当然腹が減るから、チャジャンミョンを平らげる」(情報筋)

数年前までチャジャンミョンは、めったに食べられないごちそうだった。特に地方の人々にとって、平壌見物のお目当ての一つが高級中国レストラン「香満楼(ヒャンマンル)」で食べるチャジャンミョンだったという。それが、市場経済化の進展で地方でも気軽に食べられるものとなり、また500万台(大韓貿易投資振興公社<KOTRA>の昨年9月の資料)とも、600万台(IBK経済研究所のチョ・ボンヒョン副所長)とも言われている携帯電話の普及で、店屋物の代表格に浮上したというわけだ。

注文用のアプリも登場した。

平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)に住むデイリーNK内部情報筋によると、人民奉仕総局で導入した「玉流」というアプリを使えば、30キロ離れた平壌市内のヘダンファ館から鉄板焼きを出前することもできる。食べ物以外にも600種類の様々な商品を注文できる。

    関連記事