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北朝鮮当局は、住宅の利用状態の実態調査に乗り出した。

デイリーNKの内部情報筋によると、平安北道(ピョンアンブクト)の朝鮮労働党定州(チョンジュ)市委員会(市党)は先月19日、定州市安全部(警察署)の年間事件総合報告書に関する執行委員会を開いた。その場では、住宅利用許可証と関連した犯罪は社会秩序を乱す反社会主義・非社会主義行為であり、重大事件であるとの結論を下し、住宅利用許可証の照会作業に乗り出すことが決められた。

背景には次のような事情がある。

北朝鮮で、住宅の個人所有は認められておらず、1世帯につき1戸に限り、入舎証(住宅利用許可証)が与えられ、居住することになっている。そして、この入舎証を売買する形で不動産市場が形成されている。

現在住んでいる住宅を担保にして借金をすることも可能だが、その返済に行き詰まり、借金のカタに家を奪われるケースが、経済難の中で急増しているのだ。

(参考記事:コロナ鎖国下の北朝鮮で増殖する「ヤミ金」トラブル

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安全部の報告書では、コロナ対策として国境が封鎖され、市場での商売や密輸で生計を立てていたほとんどの定州市民は生活に困り、トンジュ(金主、ニューリッチ)やヤミ両替商から、入舎証を担保にして借金をするケースが非常に多いと触れている。

また、借金が返せなくなり家を奪われ、親戚の家に居候したり、ホームレスになったり、家を渡さないとトラブルになったりしたケースが、過去2年間で急増したともしている。

一方、入舎証の用紙や人民委員会(市役所)の関連部署の印鑑を偽造し、入舎証の名義変更を勝手に行って手間賃を取るチプテコ(不動産仲介業者)も多数存在すると指摘している。

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このような不動産関連の事件は、2021年11月からの1年間で、前年同期比で3倍に増えた。

北朝鮮当局は、違法行為である不動産取引そのものを禁止しようとする動きを見せているが、今回の取り締まりは、それよりも貧困対策として行われているようだ。

(参考記事:「取り締まる側」と「取り締まられる側」がかぶる北朝鮮の「複数住宅所有禁止令」

市党の執行委員会は人民委員会に指示して、今年末までに、実際の居住者と入舎証の名義が合致しているかを確認させ、発行から10年以上経過している場合や紛失した場合には、再発行を申請させるなどの対策を示した。

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また、違法な不動産取り引きを行ったことを隠匿するために、売り主と買い主が口裏わせができないように、人民班(町内会)を通じて、事実確認を行うように指示した。さらに違反者に関する捜査と処罰に関する定州市検察所の処理結果を公開することにした。

情報筋によると、家を担保に入れて借金をした債務者には、3年から5年の労働教化刑(懲役刑)が下されている一方で、カネを貸した債権者であるトンジュやヤミ両替商が処罰を受けたケースは1件もない。

これについて市民からは「貧乏人だけが監獄行きだ」「トンジュが権力を持った幹部のバックについている、定州市も資本主義になった」との反応が出ている。

(参考記事:数百円で量刑を3分の1にできる北朝鮮の司法制度