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北朝鮮の人民保健法は、第2条で自国の医療制度について次のように謳っている。

「朝鮮民主主義人民共和国では最も先進的な人民保険制度が整えられ、病気治療で心配することなく、長生きしようとする人民の世紀の念願が輝かしく実現された。わが国で実施されている完全で全般的な無償治療制は、強固な自立的民族経済と国家の人民的な保健施策により確固として保証される。国家は全般的無償治療制をさらに強固に発展させる」

だが、現実は全く異なる。病院で診察、治療を受けるにはワイロが必要で、医薬品は市場で購入することを求められる。表向きは無償で患者を受け入れても、ワイロを支払わなければ後回しにされ、死に至った事例もある。

(参考記事:北朝鮮「産婦人科の総本山」で相次ぐ死…背景に医療の闇

有名無実化した無償治療制だが、北朝鮮国民の間で廃止されるのではないかとの噂が出回っている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、社会主義の象徴の一つだった無償治療制を放棄し、有償治療制を実施すると聞いていると明らかにした。

情報筋は10月の第3週に、平安北道総合病院に勤務する友人から「中央からまもなく無償治療制を廃止する」と衝撃的な話を聞いたと伝えた。また、医師の間では、首都・平壌の病院では既に患者から治療費を受け取る有償治療制が導入されていると密かに噂されているとのことだ。

情報筋は、力のある幹部や金持ちだけが病院で治療や手術を受けられる現実にも言及し、ワイロさえ払えば、医師の診察と薬の処方を受けられる一方で、コロナに苦しむ庶民は、病院に行っても「柳の葉やキキョウの根を煎じて飲め」という、当局推奨の民間療法を教えられるだけだと嘆いた。

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「解熱剤数錠をもらうにも、その数十倍に達する忠誠心を誓い、当局の望むとおりに各種支援事業に参加しなければならないのが、わが国の無償治療制の実態」(情報筋)

(参考記事:鼻うがい、柳の葉…北朝鮮政府が推奨する「対コロナ民間療法」

両江道(リャンガンド)の情報筋も、恵山(ヘサン)市内の病院で無償治療制がまもなく廃止されるという噂が出回っていると伝えた。医療関係者を通じて広がったこの噂、現実が現実だけあり、ほとんどの人が真実だと信じているとのことだ。

情報筋も、恵山市病院に勤務する知人から、内閣の保健省が来年の2月中に手術などの病気治療を有償にする案が採択される可能性があると伝え聞いたと明らかにした。

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住民からは、カネがなければ治療を受けられない形ばかりの無償治療制はなくなるべきで、社会主義の地上の楽園とプロパガンダを繰り返してきた当局が、無償治療制ひとつまともに施行できないことに不満の声が上がっている。

噂の真偽は確認のしようがないが、これが現実感を持って受け止められているほど、北朝鮮の医療制度は崩壊しているということだ。中には、当局のプロパガンダを信じている人もいるが、そんな人も病気になって初めて現実を知るのだ。

(参考記事:「医療は無償」という宣伝を信じ切っていた北朝鮮夫婦を襲った悲劇