韓国メディアの報道によれば、今年第3四半期に韓国に入国した脱北者は男性14人、女性9人の計23人だという。男性の方が多いのは非常に珍しく、これまで韓国に入国した脱北者全体の7割を女性が占める。そして彼女らの多くは低所得、差別、メンタルヘルスなど様々な問題に直面している。
200人近い脱北女性を対象に、英国の人権団体「コリア・フューチャー」が行った調査の報告書「脱北女性の機会と挑戦」について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が今月10日付で報じている。
まず所得を見ると、半数が月700ドル(約10万2800円)未満だ。35〜39歳の韓国女性の平均月収は2197ドル(約32万2600円)、40〜44歳は2183ドル(約32万500円、いずれも韓国統計庁の資料)だ。韓国の最低賃金は月給ベースで191万4440ウォン(約19万6300円)だが、脱北女性の収入はそれにすら満たない。
つまりはパートタイムの仕事にしか就けないか、多くが生活保護受給者であることを示唆している。ちなみに、平均的な韓国女性同様の収入を得ている脱北女性は5%に過ぎない。
また、脱北女性の68%が出産、育児によるキャリアの断絶にプレッシャーを感じている。
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一方、脱北女性は就職活動の場で様々な差別にさらされている。「脱北女性は怠け者で、ありがたみや礼儀を知らない」という偏見に直面した経験を持つ女性は2割に達した。
また、脱北女性の7割が北朝鮮で暴力などの人権侵害を経験しており、それらにより睡眠障害などメンタルヘルスに問題を抱えている例も少なくないが、偏見を恐れて多くが問題を隠そうとしている。
(参考記事:韓国で教授となった脱北者が求める「差別解消」)脱北女性は、人権に関する教育を受けていないため、どのようなことが人権侵害か認識できず、韓国に来てからも性暴力の被害に遭う可能性が高い。「性暴力被害は女性の落ち度」とする北朝鮮の風潮から、被害を訴えられずにいる人も少なくない。
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