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北朝鮮の学校でも、毎年9月に2学期が始まる。ところが、首都・平壌で問題が起きた。児童・生徒に配給されるはずの、平壌市学習帳工場製のノートがぜんぜん足りないのだ。

社会安全省(警察庁)は、ノートの行方を追跡した。すると、近場では平安南道(ピョンアンナムド)の殷山(ウンサン)、遠くは450キロも離れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)の市場で売られていることが判明した。

社会安全省は、このノート大量横流し事件の捜査に乗り出し、関与した者を摘発した。咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

情報筋によると、清津では今年の春から、この平壌市学習帳工場製のノートが出回るようになっていた。ちょうどそのころ、社会安全省は「平壌市内の学校でノートの品薄が問題になっている」と、内閣から調査依頼を受けた。

これを重大事件をみなした同省は、各道の安全局(県警本部)の監査課を動員し、平壌、清津、殷山で捜査を行った。そして、各地の学用品卸売商を国家財産略取の容疑で逮捕。彼らが販売していたノート全量を押収した。

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その後の取り調べで明らかになったのは、平壌の卸売商がコネを使って工場から生産量の2割を、1冊300北朝鮮ウォン(約5円)という国定価格で横流ししてもらい、市内の市場に1000北朝鮮ウォン(約17円)という高値で卸していたということだ。小売商はそれを1200北朝鮮ウォン(約20円)で販売していた。

元々の生産量がさほど多くなかったため、横流しされたものも量的に多いとは言えず、小売商も主に知人に販売したとのことだ。種類は漢字練習帳、音楽ノート、英語ノートなど多岐にわたるが、国家規格に合わせて生産されたもので、白い紙が使われきちんと表紙がついた、地方ではなかなかお目にかかれないものだった。

それを見かけた地方の卸売商は、一部を買い取り、地方の市場で密かに販売していたとのことだ。

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一方、ノートを横流ししていた工場のイルクン(幹部)は、朝鮮労働党の法務部と区域人民委員会(区役所)に毎日呼び出され、批判書を書かされている。内閣の依頼を受けて社会安全省が動いた重大事件とあって、工場の販売課など事件に関与した部署の職員らは、教化刑(懲役刑)の判決が下されるだろうと、情報筋は見ている。

また、市場担当の分駐所(交番)の所長と安全員(警察官)は、全員責任を取らされ、辞職することになると伝わっている。

工場の生産品の横流しは、旧共産圏諸国で広範に見られた行為だが、北朝鮮では1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降に深刻化した。それにとどまらず、設備や備品を盗み出して勝手に売り払うなど、横流しというよりは窃盗が多発した。

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これらの行為は、今になっても続いている。勤め先の国の機関や国営企業から受け取る給料が非現実的なレベルで低いため、このような形でカネを稼がなければ生きていけないからだ。

(参考記事:金正恩の「思いやり」をコケにした、ある軍医の悲惨な末路

農民は共同農場で生産された穀物を当たり前のように盗んでいる。収穫された穀物は国に買い上げられた後、農民に分配されるが、それがうまく働かず、農民の手にはほとんど何も残らない。生きていくための現金を手にするために、農民は穀物を盗み出し、市場で売り払って食べ物や営農資材を買い込むのだ。

破綻した北朝鮮の計画経済システムの中で生き残ろうともがいた結果が、一連の横流しであり、横領、窃盗なのだ。

(参考記事:「食べるものが何もない」北朝鮮の食糧難が末期症状