金正恩の「思いやり」をコケにした、ある軍医の悲惨な末路

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北朝鮮では8月と9月が、国家社会財産愛護月間に指定されている。これは、工場、企業所、機関の設備や備品を従業員が盗み出し、売り払って生活の足しにする現象が、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから、当たり前のように行われていることを反映したものと言えよう。

その真っ只中に、医薬品を盗み出して市場に売り払っていた保衛部(秘密警察)の軍医が逮捕される事件が起きた。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

逮捕されたのは、会寧(フェリョン)市保衛部に務める軍医。北朝鮮では、コロナ鎖国で中国から医薬品の輸入がストップしてしまい、価格が高騰している。

当局は、医薬品を売る商人に、市場価格ではなく、国定価格で売るように強いているが、仕入れ値よりはるかに低い国定価格では、売れば売るほど大損をする。市場価格での販売を続けている商人を逮捕し、労働鍛錬刑(短期の懲役刑)の処分を下すなどの対策を取っているが、あまり効果はないようだ。

(参考記事:商人に「国定価格」を強要…医薬品高騰に悩む北朝鮮

軍医は、保衛部に勾留されている被疑者に使うために国から支給された医薬品を盗み出し、妻を通じて、市場の商人に販売していた。ところが、この商人が市場価格で医薬品を販売していた容疑で、82連合指揮部(反社会主義、非社会主義取り締まり組織)に逮捕された。その取り調べの過程で、軍医の名前が浮上し、逮捕につながったというわけだ。

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絶大な権力を誇る保衛部は、内部で問題が起きても、表沙汰にせずに処理してきたが、今回は、地元の治安機関から独立した82連合指揮部が乗り出した事案であり、かばいきれずに、会寧市保衛部ではなく、上部機関の咸鏡北道保衛局が軍医の逮捕に踏み切った。

咸鏡北道保衛局は、軍医が、保衛部に支給された医薬品をあたかも病気になった被疑者の治療に使ったかのように書類を偽造した点、保衛部軍医所から盗み出した医薬品が市中に流通し、市場の秩序を撹乱させた点、首脳部(金正恩総書記)保衛の第一線に立つ革命戦士の使命感を忘却し、医薬品を盗み出し私腹を肥やしていた点などを問題視している。

保衛局は、今回の事件を朝鮮労働党咸鏡北道委員会に報告し、そこからさらに朝鮮労働党中央委員会に報告された。軍医に対する処分は中央から下されるものと思われるが、軽く処罰では済まされないと見られている。

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「元帥様(金正恩氏)が自宅の常備薬を寄付してまで非常防疫に総力を挙げているのに、軍医は医薬品を盗んで儲けていたのだから、一般的な批判や処罰で済まされまいだろう」(情報筋)

(参考記事:「金正恩印の愛の常備薬」の出どころは朝鮮労働党の末端党員の薬箱

事件と時を同じくして、国家社会財産愛護月間の1回目の総和(総括)が行われたが、保衛局でも、道内の保衛部の軍医所の医薬品管理の実態について検閲(監査)に乗り出したとのことだ。

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今回の犯行の動機について、情報筋は触れていないが、大量の餓死者を出した苦難の行軍のころですら、食糧配給が続けられるほど優遇されていた保衛部だが、昨今の経済難、食糧不足で、配給が減らされ、生活に困っていたことが考えられる。

もちろん、それ以前に、国家財産の横領、横流し、窃盗の類が常態化していることもある。

(参考記事:「本当に情けない」金正恩の拷問部隊、食うや食わずで“最後の手段”