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北朝鮮の一部地方の銀行が、外貨預金口座に入金した預金の引き出しを禁止する措置を取った。

デイリーNKの内部情報筋は、どこの地方かは明らかにしなかったが、ある道の人民委員会(道庁)の通貨課が、外貨預金口座に入金した外貨を現金では引き出せないという措置を取ったと伝えた。

情報筋は、この措置が中央の指示によるものではないとしつつも、今年6月に朝鮮労働党中央委員会書記局会議で、地方経済を多角的に発展させる案件が討議され、各道・市・郡の実情に合わせて通貨の規定を作り、内閣の批准を受けよとの指示が下されていたと伝えた。人民委員会は、この指示に基づき、外貨預金引き出し禁止措置を取ったものと思われる。

北朝鮮の公式通貨はウォンだが、米ドルや中国人民元が広く使われている。ウォンに信用がないため、資産形成も、ごく少額のものを除く決済も外貨で行うのが一般的になっている。政府はしばしば、国内での外貨使用禁止令を出すが、実効性がないため、当初は守られても、しばらくするとうやむやになるという流れを繰り返している。

(参考記事:北朝鮮、公債発行と同時に外貨使用を禁止するも国民は猛反発

北朝鮮の人々は、2009年に行われた貨幣改革(デノミネーション)の際、旧紙幣を銀行に預けさせられ、新紙幣の引き出し制限をかけられて財産を失った経験から、銀行のことを全く信用しておらず、利用しようとしない。

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数少ない例外が、この外貨預金口座の利用だ。高級品を扱っている外貨商店で買い物をするには、銀行に外貨預金口座を開設し、それに紐付けされたアプリやデビットカードで決済を行う必要がある。

(参考記事:北朝鮮が新キャッシュレス決済を導入、消費者の反応は今ひとつ

個人による外貨の保有と使用は法律で禁じられているが、上述の通り、外貨が広く使われているのが現状だ。今回の引き出し禁止措置は、この法律を部分的に適用した形となる。外貨を口座に入金して外貨商店で使うことは認めるが、現金での引き出しは認めないということだ。

国内でどれほどの外貨が流通しているか、当局も把握できていないと言われているが、莫大な額であることは想像に難くない。

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当面は、国民の「外貨タンス預金」をどうにかして吸い上げて国庫に納め、中長期的には、国内で使われる通貨を北朝鮮ウォンに一本化しようというのが当局の目論見だ。通貨主権を取り戻し、金融システムを正常化させたいのだ。

そのため国民に外貨を使わせるために、当局は外貨商店のみならず、様々な施設をオープンさせている。

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しかし今回の措置も、当局の思惑通りには進んでいない。消費者は、今すぐ使うだけの外貨を口座に入金している。全財産を口座に入れた日には、保有している財産の額が当局に筒抜けになり、どんないちゃもんをつけられて、財産を奪われるかわからないからだ。

(参考記事:北朝鮮国民が「金正恩の銀行」を断固拒否するもっともな理由