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北朝鮮は何かにつけて、国民を対象にした思想教育を行う。それは、犯罪被害防止でも同じだ。

当局は、凶器を使用した凶悪犯罪が最近になって増加していることを受けて、住民教養の強化を指示したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の司法関連の情報筋は、社会安全省(警察庁)が先月29日、全国の社会安全機関に対して、凶器を使用した犯罪に対する警戒心を高める住民思想教養(思想教育)を行えという内容を含めた指示文を下したと伝えた。

北朝鮮は2020年1月、世界的な新型コロナウイルスの流行を受けて、国内への流入を防ぐために国境を封鎖し、貿易を停止した。これにより、国内では深刻な経済難が起きているが、そのせいで、しばらく減っていた凶悪犯罪が再び増加した。思想教育はその緊急対策の一環だという。

先月初め、清津(チョンジン)市で、カネの絡んだ問題で、ある男性と口論となった夫婦が、刃物で刺される事件が起きた。夫は死亡したが、妻は一命をとりとめた。このように凶器を使った事件が全国的に増えているというのが、情報筋の説明だ。

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(参考記事:鎌で農民を切り裂き殺害…飢える北朝鮮で猟奇事件

地域の安全部(警察署)などは、9月から管轄区域の住民、工場、企業所の従業員、児童、生徒、学生を対象にした犯罪行為に関する集中講演会と思想教育を2回以上行うように指示を受けた。その場では、危険人物を把握し、犯罪が発生すればすぐに通報することなどを強調した。

また、殺傷能力のある刃物の製造、犯罪、所持は、それそのものが違法だとし、刃渡り7センチ以上の刃物を持ち歩いていて摘発されれば、犯罪を犯すおそれのある者として、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)送りになると警告した。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、人民班長(町内会長)から、犯罪関連の講演会があるのでひとり残らず参加せよとの知らせを受けたとし、市内の主要地点や幹線道路など、犯罪多発地帯では、安全部(警察署)の機動巡察隊がパトロールを行っていると伝えた。同時に、刃渡り7センチ以上の刃物の販売を禁じる布告も下された。

ただ、住民からは、刃物の販売規制で犯罪対策をしようとするやり方に疑問を示す声が上がっているという。

「凶器を使った凶悪犯罪が増えている原因は、今の生活苦のせいであり、刃物が多いからではない」(情報筋)

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配給が隅々までいきわたり、貧しくとも安定した生活が営めていた1970年代以前の北朝鮮では、犯罪が非常に少ないと言われていた。だが、旧共産圏などの崩壊のあおりを受けて、配給が途絶え、未曾有の食糧危機「苦難の行軍」が起きた1990年代後半には、犯罪が多発。2009年に行われた貨幣改革(デノミネーション)は、回復途上にあった経済に深刻なダメージを与え、再び犯罪が増加した。

当時の金正日政権は、公開処刑の連発、現場での射殺など非常に荒っぽいやり方で犯罪を抑え込もうとしたが、効果がなかった。

(参考記事:強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策

金正恩政権に入ってから、経済や生活が安定し、犯罪は減ったと言われているが、構造的な問題からまともに食糧を得られない朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が民間人を襲撃する事件が多発。そして現在に至るが、社会安全省は、体制の維持を至上命題と掲げ、国民の生命と財産を守ることは二の次。犯罪捜査には消極的だ。

現在の犯罪多発は、そういった北朝鮮の体制がもたらした「人災」なのだ。

(参考記事:「頼みは2頭の番犬だけ」北朝鮮の治安当局は無能の極み