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北朝鮮南西部の黄海南道(ファンヘナムド)で、新型コロナウイルス、腸チフスなどの腸内性伝染病、正体不明の「新型高熱病」、さらには結核まで流行していることは、デイリーNKでも既報のとおりだ。

その感染が、東海岸の江原道(カンウォンド)にも広がっている。黄海南道と江原道は、いずれも軍事境界線を挟んで韓国と接しているが、北朝鮮当局はその地理的条件を「利用」して、薬すらまともに入手できない現状に対する不満をそらそうとしている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:北朝鮮、コロナと腸内性伝染病に続き結核まで流行

北朝鮮政府は今月1カ月間、江原道の工場、企業所、機関、学校、幼稚園、託児所など人の集まるすべての場所で、結核患者の調査を行うことを指示した。それを受けて、江原道非常防疫指揮部は、以前に結核を患ったことのある人、発病していない保菌者、感染が疑われる人、それらの保護者や接触者を検査するとした。

また結核患者は、栄養不足や新型コロナウイルスへの感染により症状が悪化し、結核菌をさらに広げる可能性があるとして、大々的な流行を防ぐための予防のために調査だと説明した。

一方で、非常防疫指揮部は、こんなとんちんかんな話をしている。

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「南朝鮮(韓国)から送った敵地物資を食べると、肺結核などありとあらゆる伝染病にかかり、命を落としうる」
「南朝鮮の共和国(北朝鮮)抹殺政策に騙されてはいけない」

韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」は今月6日、マスク2万枚、解熱鎮痛剤7万錠、ビタミンC3万錠などを、金正恩政権を批判するアドバルーンと共に、大型の風船で北朝鮮に向けて飛ばしたと明らかにしている。また、先月にも2回、物資とビラを入れた風船を飛ばしている。

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北朝鮮の対外広報週刊紙「統一新報」は16日付の記事で、一連の物資、ビラ散布を「到底許されない公然の対決妄動」と批判した上で、ビラがコロナを広めたと主張した。

「国家非常防疫司令部の調査によると、共和国内に流入した新型コロナウイルス感染症の発病地域が、軍事境界線と最も近い前沿地域(軍事境界線に接した地域)」
「これは、共和国内に拡散した悪性伝染病(コロナ)が、脱北者のクズどものビラ散布妄動と関係があることを示している」

記事では結核の話は触れられていないが、「韓国のせい」「安全企画部(現国家情報院)のしわざ」というのはよく使われるレトリックだ。江原道非常防疫指揮部は、この記事からヒントを得たというわけではなく、自分たちに責任追及されることのないように、韓国に責任をなすりつけたのだろう。

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そもそも結核菌は、栄養状態が良好で抵抗力が備わっていれば、吸い込んだとしても免疫システムにより排除される。

しかし現在の北朝鮮は、一部で餓死者を出すほどの食糧難にある。コロナ対策で国境が封鎖され、食糧や医薬品が入ってこないことが食糧難に拍車をかけているが、政権としても、「韓国のせい」にしておくのは、とても都合がいいのだ。

(参考記事:「韓国がコロナを浸透させた」北朝鮮当局が流す陰謀論

今回の検査で患者、保菌者と診断された人は、江原道非常防疫指揮部が責任を持って病院で治療を行うとしつつも、その家族に対しては、1人あたり3カ月以上の食糧、おかずと栄養剤の費用20万北朝鮮ウォン(約4000円)を準備せよ、それが無理ならば所属する単位(職場)や洞事務所(末端の行政機関)が責任を持って支援せよと指示している。

だが、一連の宣伝や対策について、北朝鮮国民はその本質を見抜いているようだ。そもそも食糧や医薬品が行き渡っていれば早期に治療して治っていただろうと、今回の方針を鼻で笑い、ひどい国だとの声が上がっていると、情報筋は伝えた。