北朝鮮の国営の朝鮮中央通信が配信している様々な記事。その中には、このようなものが散見される。
革命学院の生徒と全国の子ども、小学校の生徒が贈り物をもらう
【平壌1月2日発朝鮮中央通信】敬愛する金正恩総書記は新年を迎えて革命学院の生徒と全国の子ども、小学校の生徒に贈り物を送った。
万景台革命学院(平壌)と康盤石革命学院(同)、各地の育児院、愛育園、初等学院、平壌から遠く離れている北辺の片田舎と境界沿線の農村、朝鮮東海と朝鮮西海の離島の村の全ての子どもと小学校の生徒が贈り物をもらった。---
これは、北朝鮮の基本である「贈り物政治」だ。全人民は高い徳を持った最高指導者の思し召しで、幸せに暮らすことができるという人徳政治(徳治主義)だ。ありがたいことに学用品が贈り物として下賜されたが、実際に受け取った児童、生徒やその親は冷淡な反応を示している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、道内のすべての小学校、初級中学校(中学校)、高級中学校(高校)で6月14日、贈り物贈呈式が開かれたと伝えた。午前10時から始まった式では、新入生の名前が一人ひとり呼ばれ、夏用の制服、学用品、かばんが記載された贈り物明細書が手渡された。司会者は「コロナ感染で国の経済は苦しいが、最高指導者の崇高な次世代への愛により、贈り物が用意された」と宣伝した。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、清津(チョンジン)市内の学校で行われた「贈り物制服贈呈式」の様子を詳しく伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面式は午前9時から始まり、最初に司会者が金正恩氏の愛がいかに深く、配慮が細かいかと述べた後、生徒の代表が、感情のこもった声で、「党の忠実な後続隊として準備することを固く誓う」と半分泣きながら叫ぶも、それを見つめる他の生徒は退屈そうで「早く終わればいいのに」という空気が流れていたとのことだ。結局、式は3時間も続いたという。
(参考記事:金正恩センスの制服「ダサ過ぎ、人間の価値下げる」と北朝鮮の高校生)制服に関しては、すでに学校で採寸が行われているため、新入生は地域の商店に行って明細書を渡すと受け取れる方式になっている。贈り物とあって、もちろん無料だ。だが、実際に受け取った新入生や親は有難がるどころか、反発している。中には激昂する人もいたようだ。
「1年に学校に納めるカネがいくらなのに、あの程度の制服で贈り物などと言って自慢するのか」
「タダで贈り物をやるとか言わなくていいから、生徒に『ちびっ子計画』を強いるな」
(父兄)
教育は無償ということになっている北朝鮮の学校だが、様々な名目で金品の供出が求められる。
(参考記事:北朝鮮の中高生「残酷な夏休み」…少女搾取に上納金も)
例えば、「忠誠のちびっ子計画」(ノルマ)というものがあるが、ウサギの皮2枚以上、くず鉄、くず銅、古紙、古ゴム、ハギレ、薪など経済活動に使われる物品に加え、ペンキ、石灰、窓ガラス、モップ、雑巾、ほうきなど学校で使う物品または現金を供出することを求められる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そればかりではない。道路や線路の補修、建設現場、農村、人民軍の支援などに必要な金品の供出や労働奉仕を求められたりする。それを考えると、制服や学用品をもらったくらいでは釣り合いが取れないということだ。
(参考記事:北朝鮮で強制労働させられる子どもたち…王様どころか奴隷)これらを供出できるだけの経済的余裕のない家の子どもたちは、梅雨の長雨で増水した川から流されてくる靴や古着を拾いに行く有様だという。費用負担に耐えかねて、学校を辞めてしまう子どももいる。
「勉強に集中すべき子どもたちに、教室で使う薪や堆肥(肥やしに使う人糞)まで治めよというのだから、怨嗟の声は大きい」(情報筋)
(参考記事:北朝鮮、無償教育のはずが教育費払えず退学続出の謎)金正恩氏は、昨年1月の朝鮮労働党第8回大会の結語で、「社会生活の各分野で現れているあらゆる反社会主義的・非社会主義的傾向、権力乱用と官僚主義、不正・腐敗、税金外の負担などあらゆる犯罪行為を断固阻止し、統制しなければならない」と述べ、人民に税金外の負担を強いるなとしているが、全く守られていないようだ。
(参考記事:金正恩命令に「深刻な矛盾」…経済難の国民負担を加重)