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史上初となる南北首脳会談が、北朝鮮の首都・平壌で開催されたのは2000年6月。南北の雪解けムードに乗って、北朝鮮で広がり始めたのが、韓流だ。流入経路となったのは、韓国とは方向的に真逆の、中国遼寧省の丹東と吉林省の延辺朝鮮族自治州・延吉だ。

両市内の市場には、韓流ドラマ・映画のビデオ、VCD、DVDを扱う大型店舗が軒を連ねた。当時の中国では、韓国の衛星放送が自由に見れたこともあり、韓国での放送の翌日にはコピーされ、北朝鮮に輸出されていった。

デイリーNKは2004年12月、平安北道(ピョンアンブクト)に住む男性の話として、2000年代初頭から北朝鮮と中国を行き来する商人や脱北者の手によって、韓国や中国の映画の入ったVCDが流入するようになり、今では大量にコピーして市場に卸す流通組織ができたと報じている。

北朝鮮は、これらを「体制を揺るがす危険な動き」として取り締まりを行うようになった。

「去年、隣人が保衛部(秘密警察)の検閲にひっかかりえらい目にあった。友人何人かを呼んで家で韓国映画を見ていたところ、急に電気が消えた。テープをビデオデッキから取り出せないように、保衛部の要員が外から電気を遮断したのだ。彼はビデオデッキを取り上げられ、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)に行くはめになったが、ワイロを使って出てきた」(上述の男性)

(参考記事:韓流ドラマ検閲部隊「109常務」の取り締まりが強化

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それから20年近く経ったが、北朝鮮から未だに韓流は消えておらず、それどころかすっかり根を下ろしている。当局は、相変わらず取り締まりに力を入れている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、「不純録画物を見たり流布させたりする現象を徹底的になくせ」と題した解説談話資料が、青年同盟(社会主義愛国青年同盟)の各組織に配布されたと伝えた。その内容を見ると、20年前とさほど変わらない旧態依然とした文章の羅列だ。

「異色的(資本主義社会の影響を受けた文化)で退廃的な不順録画物を隠れてみたり流布させたりする現象がなくならず、社会の健全な雰囲気を乱している。こんなものにハマれば、中々抜け出せず、敵どもの狙いどおり、反逆と裏切りのどん底に落ち、人生を駄目にする」

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また、これらの視聴、密売、流通に加担することは、祖国と人民に銃を向けるのと同様の反逆行為で、資本主義に対する幻想と腐ったブルジョア生活様式を取り入れることだとし、若者に対して警戒心を持つように呼びかけた。

(参考記事:引き出された300人…北朝鮮「令嬢処刑」の衝撃場面

さらに、韓流の裏には米国帝国主義者と階級の敵がいて、人民の命と暮らしそのものであるわが国の社会主義制度を内部から崩そうと発狂している、国境沿いに住む若者は高い意識と矜持を持て、などと主張している。

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清津(チョンジン)市内の青年同盟の各委員会では、この資料を使って、週2回の講演会を実施しているが、田植え戦闘などで農村に動員され疲れ切っているところに、こんなカビの生えたような話をされても、まともに耳を傾ける者はいないだろう。

(参考記事:「あまりにくだらず衝撃的」金正恩の“自慢話”に国民が唖然

情報筋は「新しいものに敏感な若者が、発展した国(韓国や中国)の映画やドラマを見ないわけがない」とし、取り締まり強化で多少はおとなしくするかもしれないが、状況は対して変わらないだろうと見ている。

当局は、韓流視聴、密売を含めた反社会主義、非社会主義行為に対する取り締まりを、今までになく強化しており、安全部(警察署)に逮捕される人の数が、2019年と2021年を比較して、4倍に増加したという。

ここまで取り締まりをしても、若者たちは韓流を捨てようとしない。北朝鮮で、「南朝鮮の子どもたちは、缶を持って物乞いをしている」という嘘の教育が通じたのは、もはやはるか昔の話だ。

(参考記事:犯罪者4倍増…北朝鮮を悩ませる「やり過ぎ」金正恩命令