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国を上げて、新型コロナ対策の「非常防疫大戦」を行っている北朝鮮。各地からは、医薬品と食料品が足りないとの声が上がり、餓死者発生でロックダウンを緩和した地域もあるほどだ。

そんな中、咸鏡北道(ハムギョンブクト)と平安南道(ピョンアンナムド)の当局は、石炭輸送を大々的に行った。咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋が説明した。

沿岸部に工業地帯が広がる北東部の咸鏡北道では、実は石炭があまり取れず、主に産出するのは質の落ちる褐炭だ。一方で西部に位置する平安南道には、良質の石炭が取れる炭鉱が集中している。

そこで両道は、平安南道の石炭を咸鏡北道に輸送する合同作戦を、内閣の承認を受けた上で、5月上旬に行った。

「連合石炭供給」と命名された今回の作戦、人民の生活問題のうち、いずれか一つを無条件で解決せよという朝鮮労働党中央委員会の指示に基づくものだ。食糧問題や電力難など山積する課題のうち、咸鏡北道は燃料問題を解決することにしたわけだ。

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一方の平安南道では、輸出ができなくなった石炭が野積みにされており、まもなく到来する梅雨の雨に当たると品質が損なわれてしまう。そこで、両道が協力して石炭を輸送することにした。

(参考記事:コメ、水、燃料のいずれも調達できない北朝鮮の地方政府

5月7日から数日間、10トン以上の貨物を積載できる貨物列車に積み込まれた石炭は、清津(チョンジン)、穏城(オンソン)など、咸鏡北道各地に運ばれ、貨物駅や学校の運動場には石炭が山積みになっているとのことだ。それを見た現地住民は「こんなに大量の石炭を見たのは初めてだ」と驚きを隠せずにいるという。

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これらの石炭だが、住民に配給されることはなく、有償、それも国定価格より高い値段で売り払われた。

例えば、平安南道の順川(スンチョン)にある直洞(チクトン)炭鉱から産出された石炭は、ボタ(捨石)が多く混ざっているとの理由で、1トンが30〜40ドル(約3800円〜5070円)で売られた。これは通常の倍以上の価格で、ただでさえ苦しい生活を強いられている一般庶民にはとても手が出せず、トンジュ(金主、新興富裕層)が買い占めてしまったという。

両道は、このような形で販売する意図はなかったものの、非常防疫方針が下されている中で、貨物列車を長期間停めておけないとの理由で、さっさと売り払って、列車を撤収させる決断を下したとのことだ。

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人民生活向上の一環として行われたはずの石炭合同輸送作戦だが、人民の生活には全く役に立たず、トンジュを儲けさせるだけの結果となった。ちなみに、石炭を買い占めたトンジュは、越冬用の燃料の需要が高まり、価格が上昇する秋になってから販売すると情報筋は伝えた。

(参考記事:暖房なしで氷点下20度…北朝鮮の庶民は命がけの越冬生活