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北朝鮮政府は、今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)110周年を控え、人民生活向上に関する指示を地方政府に出した。しかし、予算や物資の支援を行うわけではなく、指示を下しただけで、現場では困惑が広がっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、政府は太陽節110周年を迎え、すべての市と郡で人民生活問題において最も重要なコメ、水、火(燃料)の問題のうち、1つでも解決する対策案を出して、成果を報告せよと指示した。自力更生の原則から、地方政府に問題を丸投げした形だ。

朝鮮労働党咸鏡北道委員会(道党)は、道内に多数存在する炭鉱で石炭革命を起こせば、燃料の問題を解決できると結論づけた。石炭を増産すればなんとかなるだろうという安易な解決方法だ。

朝鮮労働党穏城郡委員会(郡党)は拡大会議を開き、解決案を議論した。郡党からは、3つのうち、コメと水の問題は解決が難しい部分が多いと指摘し、燃料だけでも確実に保証して、党が懸念する3大人民生活必須要素のうち1つを解決しようとの言及があった。

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その後、郡内の炭鉱の支配人、初級党書記らを集めて褐炭鉱の開発、既存の炭鉱の活性化で、住民の燃料を調達する自給自足の先鋒隊の役割をすると誓わせる宣誓文決起の集いを開催した。

しかし、炭鉱のイルクン(幹部)の多くは、炭鉱の現実に合わない対策だと否定的な反応を示したという。

「現在、工場の焼成炉を動かすのも難しい実情で、住民向けの燃料を豊富に供給するというのは理屈に合わない」(イルクン)

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工場への石炭供給すらままならない状況で、何の予算支援もないままに増産を求められても、どうしようもないというのだ。また、穏城炭鉱の置かれた社会的位置づけも問題を複雑にしている。

「穏城炭鉱は『革命化』の対象者が多くやってくるところで、労働力も不足し、技術革新や自動化工程もなく、燃料自給自足の先鋒隊の役割ができるところではない」(イルクン)

革命化とは、何らかの間違いを犯して職を解かれ、都市を追放され、奥地の農場や炭鉱に送られる刑罰の一種で、わかりやすく言えば「島流し」だ。同じ炭鉱でも、最新設備を導入し、やる気のあるエンジニアが技術開発を進め、政府首脳が度々視察に訪れるようなところとは環境が全く異なる。そんなところで石炭の増産など見込めるわけがないということだ。

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炭鉱のイルクンたちは、いつ炭鉱を近代化して全般的な住民の燃料問題を解決できるのか、会議はただの会議に過ぎないと首を横に振るばかりだという。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】自力更生を叫んでばかりの政府は無能

解決策はないが、責任だけ取らされる可能性もある。吊るし上げられ、けちょんけちょんに批判された上で、解任されたり、最悪の場合は教化所(刑務所)送りにされる可能性もある。炭鉱のイルクンは、気が気でない日々を送っていることだろう。

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