北朝鮮が現在、大々的に推し進めている「平壌市5万世帯住宅建設構想」。その一つ、和盛(ファソン)地区はもともと大城(テソン)区域(日本の区に相当)に属していたが、それを和盛区域として独立させる決定がなされた。以下、国営朝鮮中央通信の記事だ。
和盛地区の行政区域の名称を定める
【平壌4月15日発朝鮮中央通信】敬愛する金正恩総書記の雄大な首都建設構想に従って、わが国の社会主義文明の中心に転変している錦繍山太陽宮殿の周辺一帯の和盛地区に人民の理想都市が立派に建てられている。
朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会は、和盛地区に偉大な金正恩時代を代表する近代的都市区画が建設されることに関連して、この地区を平壌市和盛区域に決定した。これに関する朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会の政令が14日、発表された。---
これに伴い、平壌市の区域は20に増えたが、当局は、今まで平壌に住民登録をしないままで暮らしていた住民をこの区域に登録させるという極めて異例の措置を取っていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
当局は、和盛区域を「(金正恩総書記の)配慮区域、贈り物区域」だと宣伝し、平壌市民証を持たずに違法に平壌に暮らしている人、中でも和盛区域に隣接する大城、龍城(リョンソン)、西城(ソソン)、三石(サムソク)の各区域に住んでいる人を把握し、優先居住登録を行っている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)110周年を迎え、平壌の安全機関(警察)に対して、「4.18方針」を下し、住民登録、居住担当部署の安全員(警察官)に対し、平壌市に未登録のままで居住している人をすべて探し出し、居住手続きを取るように指示した。
今回、対象になる人のほとんどは、平壌出身の男性と結婚した地方出身の女性や、平壌出身だが何らかの理由で地方に一時的に居住後、平壌に戻ってきた人々だ。今まではそんな人ですら様々な理由をつけて、平壌から追放するのが当たり前だった。未登録の人々は、いつ追放されるかわからず、肩身の狭い思いをしながら暮らしていた。
(参考記事:金正恩が焦る平壌の食糧難…解決策は「市民追放」)様々な不便をこうむってきた人々は、「今までは苦しかったが、平壌にやってきて数年間苦労した甲斐があった」と大喜びしているとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面得られるメリットは新しい住宅と、平壌市の居住資格だけではない。和盛地域は、同様に住宅建設が行われている松新(ソンシン)・松花(ソンファ)地区よりも格上の地域で、住んでいるだけで配給など様々な面で優遇される「30号対象」、つまり「上級市民」扱いとなるのだ。
(参考記事:北朝鮮に存在する「上級市民」と「下級市民」隔てる高い壁)
万民が平等という建前はあるものの、実際は徹底した階級社会である北朝鮮において、自動的に身分が上昇できるまたとない機会とあって、未登録で暮らしている人々の家に間借りで転がり込み、あわよくば新しい住宅を得ようとする人々も現れている。ちなみに、今回の指示は、一般には公開されていないが、既に噂が広がっている。