2月16日は光明星節、金正日総書記の生誕記念日だ。特に今年は生誕80周年とあって、コロナ鎖国の経済難の中でも盛大に祝われるだろう。その日を飾るのは金正日花。日本の園芸業者が1988年、金正日氏の46歳の誕生日を祝って贈ったとされているベゴニアの一種だ。
最高指導者の名前が付けられているだけあって、その扱いは肖像画など同様に慎重を要し、間違った扱い方をすれば法的処罰の対象となる。実際、金正日花の管理者が相次いで処罰を受けていると、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
先月中旬、道内の三水(サムス)郡の邑地区(郡の中心地)にある金日成ー金正日花温室のハン支配人(50代)が話の主人公だ。
インドネシア原産の金日成花と共に、金正日花も冬期の温度と湿度の管理が欠かせないが、支配人は、そのための薪の供給も国から受け取れず、だからといって独自のルートで薪を入手することもできず、手をこまねいて見ていた。
そんな中、先月の朝鮮労働党中央委員会第8期第6回政治局会議で、光明星節と太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)を盛大に祝うとの決定がなされた。朝鮮労働党三水郡委員会は、郡独自で金正日花展示会を企画せよとの指示を出した。
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ところが、ハン支配人は「展示会までに金正日花を咲かせるのは難しい」と報告した。報告を受けた郡党委員会は、職務怠慢との理由で、支配人を解任し、労働鍛錬刑(懲役刑)半年の処分を、また、ボイラー担当のチェさん(40代)には労働鍛錬刑3ヶ月の処分を下した。さらに花の管理員のキムさん(40代)は毎日、郡党委員会に呼び出され、花の管理状況を報告させられ、批判書を書くことを強いられた。3人以外の職人にも処罰が続いている。
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そもそもの問題は、温度や湿度管理に欠かせない薪の供給を怠った上級の幹部にあるが、一切の処分は行われておらず、「なぜ今ごろになって下級幹部だけに責任をなすりつけるのか」などと言った声が上がっている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面下級幹部に罪をなすりつけ、上級幹部はのうのうと暮らしている状況は、今に始まったことではない。
他の国では叱責程度で済まされる問題でも、北朝鮮では懲役刑が課せられるほど重罰化傾向が著しく、教化所(刑務所)の環境の劣悪さを考えると、命取りになりかねない。上級幹部も生き残るために、下に責任を丸投げするのだ。
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