北朝鮮の首都・平壌の比較的築年数の新しいマンションで、燃料として使われているのはガスだ。都市ガスがないため、プロパンガスやカセットコンロのボンベが使用されているが、ロシアのウクライナ侵略により全世界的な供給の滞りの影響を受けて、北朝鮮国内でも価格が上昇している。
デイリーNKの物価調査によると、3月20日の時点でプロパンガス20キロが37万北朝鮮ウォン(約6700円)で取り引きされている。昨年9月初旬の28万9000北朝鮮ウォン(約5200円)に比べて3割ほど上昇している。カセットコンロのボンベも1本5500北朝鮮ウォン(約100円)だったのが、9000北朝鮮ウォン(約160円)まで値上がりしている。
暖房と炊事需要が増える10月から2月まで価格が上昇し、3月に入ると下落するのが例年の値動きだが、今年に限っては下落する気配を見せていない。ちなみに地方都市や築年数の古いマンションなどで使われている練炭の価格は、一時最高で6割も値上がりしたが、春の到来で値下がりしている。
地下資源の豊富な北朝鮮ではあるが、天然ガスは産出しないため、多くをロシアからの輸入に頼っているものと思われる。なお、国連安全保障理事会は2017年9月に採択した対北朝鮮制裁決議で、石油と共に液化天然ガスの北朝鮮への輸出を禁じており、どのような形で北朝鮮に持ち込まれているかは不明だ。
最近に至るまで輸入そのものをブロックするコロナ鎖国を行っていたため、その影響で国内備蓄分が枯渇しつつあるとも考えられるが、北朝鮮ウォンの対ドル、人民元の価値が大幅に下落していることや、ロシアからの供給に何らかの支障が生じたことも影響していると思われる。
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当局は、個人業者のガソリン販売が価格上昇の原因と見て取り締まりを行っているが、ガスに関しても同様の措置を取る可能性が考えられる。
(参考記事:北朝鮮、ガソリン個人業者の摘発強化…価格安定が目的か)