「住民をすべて殺すわけには…」北朝鮮の地方都市で大粛清のジレンマ

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北朝鮮北東部、中国を国境を接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)市では、15万人に達する市民の多くが、中国キャリアの携帯電話を使用している。地域経済そのものが、中国との合法、非合法の貿易で成り立っていたからだ。

地域の保衛部(秘密警察)、安全部(警察署)は、彼らからワイロを徴収して、一種の共存関係を築いてきた。そんな状況に変化が現れたのが、昨年2月の朝鮮労働党第8期第2回総会の後だ。

中国キャリアの携帯電話の使用が、秘密主義の北朝鮮政府が最も忌み嫌う国内情報の流出を招いているとして、平壌の国家保衛省は、各地域の保衛部に外部と連絡している者は理由を問わずに無条件でスパイ容疑を適用し逮捕せよとの指示を下した。

また、各地に取り締まり組織である82連合指揮部を派遣、地元とのしがらみとは関係なく強力な取り締まりを進めた。その結果、人口15万人の会寧で数百人が逮捕される事態となった。

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逮捕された人々はひどい拷問を受けた末に管理所(政治犯収容所)送りになったり、最悪の場合には処刑されたりした事例もある。また、連座制が適用されるため、家族とて無事ではいられず、奥地に追放される処分を受けたりした。

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そんな中で地元の保衛部は、中国キャリアの携帯電話を使用して逮捕された人の一部を釈放した。そこには当局の思惑が見え隠れする。地元のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

釈放されたのは、チェさん(40代)ら3人。チェさんは、中国や韓国からの送金を北朝鮮の受取人に渡す送金ブローカー業を営んでおり、それに欠かせない中国キャリアの携帯電話を持っていたが、保衛部は、国内の機密情報を外部に流出させたとして、非法(違法)国際通信罪とスパイ罪を適用、逮捕した。

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逮捕当時はスパイを捕まえたと騒ぎ立てていた保衛部だが、1年以上続いた取り調べでも、使用していた携帯電話からは国内向けの資料を転送した痕跡も、国内の物価情報を外部に伝えた記録も見つからず、別の2人と共に最近になってようやく釈放された。

なんとか命はとりとめたものの、チェさんは長期間にわたる拷問のせいで左足がまひしてしまった。それでも生きて出られただけでも幸いだと情報筋は語る。

「(当局が)中国の携帯電話使用者を民族反逆者として規定するほど敏感な事案だけあって、生きて出られただけでも幸いなことだ」(情報筋)

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保衛部がチェさんらを釈放したことについて、取り締まりが地域社会に大きな影響を与えていることを挙げた。

「国境沿いの地域の住民のほとんどが外国と通話をしている。だからといって彼らを全員殺すわけにはいかないではないか。行き過ぎた処罰は、むしろ副作用が大きい点を考慮し、犯罪容疑が弱い対象は痛めつけるだけにして釈放しているようだ」(情報筋)

携帯電話を使った密輸で成り立っていた地元経済は、コロナ鎖国と厳しい取り締まりで壊滅状態に陥り、多くの人々が日々の糧にも事欠くような状態になっている。さらなる取り締まりを進めると、市民からの反発が抑え込めないほどになりかねない。当局はそれを恐れたのではないだろうか。

(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域

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