金正恩激怒で「陸の孤島」へ…幹部ら200人葬った連座制のワナ

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北朝鮮で反動思想文化排撃法――別名「韓流取締法」により処罰される幹部が増加している。幹部本人よりもその子どもが韓流ドラマや映画などを視聴して摘発され、連座制で家族全員が処罰されているのだ。

(参考記事:犯罪者の4割は「韓流ドラマを見た、売った」…北朝鮮の極秘統計

デイリーNKの北朝鮮国内の高位情報筋によると、昨年後半から中央党(朝鮮労働党中央委員会)、内閣はもちろん、韓流を取り締まる立場の社会安全省(警察庁)など司法機関の幹部を含め、反動思想文化排撃法により処罰を受けた者は200人に達する。地方の幹部まで含めるとその数はさらに多いと見られる。

拷問や公開処刑を担当し、金正恩総書記の恐怖政治を支えてきた国家保衛省(秘密警察)も例外ではない。

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例えば、国家保衛省の部長クラスの幹部Aの息子で、平壌外国語大学に通うBは、Aと親しい国家保衛省の取締官Cから、取り締まりの過程で押収された韓流ドラマの入ったデバイスを購入し、半年以上にわたり韓流コンテンツを視聴していた。ところが、Bが複数の友人にデバイスを貸したことが問題の火種となった。

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Bは、平壌外国語大学の同級生である男子学生Dと女子学生Eにデバイスを貸したのだが、BとDはEとの関係を巡って不和となった。その腹いせのためか、Dは検察所の幹部である父親Fに、Bから韓流ドラマのデバイスを借りたことを打ち明け、自首すると告げた。

Fは息子に、居住地域ではない別の地域の82連合指揮部(韓流取り締まり班)に告発するよう促した。Bの父親のAは、他の省庁より強大な権力を持っている国家保衛省の幹部であるため、地域の82連合指揮部や社会安全省に通報してももみ消されると判断してのことだ。また、自首すれば情状が酌量され減刑されることも考え、D本人が自首できるように助けたという。

この件は金正恩総書記の耳にも入り、「子どもひとりも躾けられない幹部は、人民に号令をかける資格すらない」と激怒したとのことだ。

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その結果、Bは労働教化刑(懲役刑)15年の判決を受け、父親のAは強制的に退役させられ、家族もろとも咸鏡南道(ハムギョンナムド)の長津(チャンジン)郡に追放された。内陸部の「陸の孤島」で、冬の寒さの厳しいところだ。

一方、事件を密告したDに対しては、労働鍛錬刑(懲役刑)1年の比較軽い判決が下され、父親のFも、平壌市内の検察所のヒラ検事に降格させられたものの、家族の追放は免れた。

事件のもうひとりの当事者である女子学生のEに対しては、労働教化刑7年の判決が下され、家族は平安南道の温泉(オンチョン)郡に追放された。平壌からほど近く、奥地というほどではないため、B一家への処罰と比べて軽く済まされたものの、北朝鮮の拘禁施設の環境の劣悪さを考えると、懲役7年の刑は決して軽くない。

(参考記事:金正恩の女囚28人の残酷体験「この悪夢はいつ醒めるのか」

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Bに韓流ドラマのコンテンツを販売した取締官Cを含めた、平壌市内某区域の82連合指揮部に対しては、メンバーの総入れ替えが行われ、全員が炭鉱送りとなった。

このニュースを聞きつけた平壌市民の間には、かなりの衝撃が走っている。国家保衛省の幹部の息子が違法行為に加担したことに加え、韓流を取り締まる側の82連合指揮部が、押収した韓流コンテンツを密売していたからだ。

市民たちは、コロナ鎖国が2年以上続き、韓流の最新コンテンツがほとんど国内に入ってこない中で、そんなものが出回っていたということにも首を傾げている。

(参考記事:前代未聞、北朝鮮男性を「逆吊し上げ」で見せしめ